「会社案内を新しくしたいのですが、何を載せればよいでしょうか」。そう聞かれたとき、私はたいてい、反対に質問します。
「その会社案内は、誰に渡すことが一番多いですか」
新しいお客様に渡すのか。採用活動で使うのか。展示会で配るのか。金融機関や取引先に会社を説明するために使うのか。相手が変われば、載せるべき内容も変わります。
ところが、会社案内をつくり始めると、どうしても欲が出てきます。会社概要も、沿革も、設備一覧も、製品も、社長あいさつも載せたい。せっかくつくるのだから、できるだけ多くの情報を入れたくなるのは当然です。ただ、全部を載せることと、全部が伝わることは同じではありません。
会社案内は、最初から最後まで読まれるとは限りません
少し厳しい言い方になりますが、会社案内を受け取った人が、すべてのページを丁寧に読んでくれるとは限りません。
商談の前に数分だけ見る。机の上でぱらぱらとめくる。持ち帰って、必要になったときにもう一度開く。実際には、そのような読まれ方のほうが多いのではないでしょうか。
だからこそ、最初の数ページで「何をしている会社なのか」「どのような相談ができるのか」が分かることが重要です。
立派な沿革や詳しい設備一覧があっても、自分の困りごとに応えてくれる会社なのかが見えなければ、その先まで読んでもらえないかもしれません。まず、相手が知りたいことを置く。そのあとに、それを裏づける技術や実績、設備、会社情報を続ける。
会社が説明したい順番ではなく、受け取る人が知りたい順番に並べ直します。これだけでも、会社案内はずいぶん読みやすくなります。
載せないものを決める作業もあります
限られた紙面に、すべての情報を詰め込むことはできません。文字を小さくして押し込めば入るかもしれませんが、それでは読む人に負担をかけてしまいます。情報が多すぎて、何が一番の強みなのか分からなくなることもあります。
そこで、「これは本当に会社案内に必要だろうか」と一つずつ考えていきます。
詳しい製品仕様はWebサイトに任せる。最新の実績は二次元コードから見てもらう。細かな採用条件は採用ページで伝える。
会社案内だけですべてを説明しなくてもよいのです。紙では、会社の全体像と特徴を分かりやすく伝える。もっと知りたい人には、Webサイトで詳しい情報を見てもらう。紙とWebの役割を分ければ、会社案内にも余白が生まれます。
私は、この余白も情報の一部だと考えています。詰め込まれていないからこそ、大切な言葉や写真が目に入ってきます。
設備の写真だけでは、会社の空気までは見えません
会社案内でよく使われるのが、社屋、設備、製品の写真です。もちろん、どれも必要な写真です。ただ、立派な機械が並んでいても、そこで誰が、どのように働いているのかが見えないことがあります。
働いている人の表情。製品を確認する手元。お客様と話している場面。社員同士で相談している様子。そうした写真が一枚入るだけで、会社案内の温度が変わります。特に採用にも使うのであれば、求職者が知りたいのは設備の大きさだけではありません。「ここで、どのような人たちと働くのだろう」と考えながら見ています。
写真撮影では、きれいな写真を撮ることだけでなく、何を見せればその会社らしさが伝わるのかを考える必要があります。
原稿を書く前の話に、その会社らしさがあります
会社案内の制作では、原稿を書き始める前の取材に時間をかけます。
会社の歴史や事業内容だけでなく、どのようなお客様から相談を受けるのか、仕事で大切にしていることは何か、これまでにどのような苦労があったのかも伺います。すると、本題から少し外れた話や、何気ない一言の中から、その会社らしさが見つかることがあります。
ご本人は「そんなことは普通ですよ」とおっしゃいます。でも、外から見ると、普通ではありません。長い間続けてきた工夫であったり、お客様から信頼されている理由であったりします。用意された原稿を整えるだけでは、こうした話はなかなか出てきません。
話を聞き、言葉を拾い、どのように見せれば伝わるのかを一緒に考える。会社案内の制作で一番時間をかけたいのは、実はこの部分です。
何を載せるか決まっていなくても大丈夫です
会社案内をつくりたいと思っても、最初から掲載内容が決まっている会社は多くありません。むしろ、「今の会社案内では何かが足りない。でも、何を変えればよいのか分からない」という状態から始まることのほうが多いものです。
まず、誰に渡すのかを考える。次に、その人に何を知ってほしいのかを考える。そして、会社の中にある材料を一度すべて出してみる。載せるものを決めるのは、そのあとです。
会社案内は、会社の情報を集めた冊子ではありません。会ったばかりの相手に、自分たちのことを知ってもらうためのものです。そう考えると、何を載せ、何を載せないのかも、少しずつ見えてきます。


