「転勤あり」の一行だけで応募候補から外されていないでしょうか

採用担当者が転勤を経験した社員から話を聞いている様子

私は、採用情報に書かれた「転勤あり」という一行を見るたびに気になってしまいます。

間違ったことは書いていません。転勤の可能性があるなら、きちんと伝える必要があります。ただ、求職者に分かるのは、それだけだからです。

いつ転勤するのか。どこへ行く可能性があるのか。全員が対象なのか。断ることはできないのか。費用は会社が負担してくれるのか。何も分からないまま、「自分には難しい」と判断して、応募候補から外してしまう人もいるのではないでしょうか。

この一行は、会社が思っている以上に重いのかもしれません。

転職希望者の約7割が、転勤に抵抗を感じています

マイナビが2026年3月に公表した「転勤と転職に関する調査レポート2026年」によると、転職を希望している正社員の68.8%が、転勤のある会社では「働きたくない」「どちらかといえば働きたくない」と答えています。

就職先を決める際に、転勤の有無を考慮する人は77.3%でした。

これだけを見ると、転勤がある会社の採用は難しい、と感じます。実際、転勤を受け入れられない事情を持つ人はいます。家族の仕事、子どもの学校、親の介護、持ち家など、会社側の説明だけでは解決できないこともあります。

どれほど丁寧に情報を伝えても、応募につながらない人はいるでしょう。ただ、調査をもう少し詳しく見ると、転勤を避けたい理由として最も多かったのは、「転居にお金がかかる」という回答でした。ほかにも、転居作業の負担や、家族と離れることへの不安が挙げられています。

「転勤そのものが絶対に嫌だ」というだけではなく、転勤によって何が起きるのか分からないことも、抵抗感を大きくしているように見えます。

会社には制度があっても、求職者には見えていません

転勤のある会社には、転居費用の補助、借上社宅、住宅手当、赴任手当、帰省費用の補助などが用意されていることがあります。配属先について本人の希望を聞いたり、家庭の事情を考慮したりしている会社もあります。

ところが、採用情報を見ると「転勤あり」としか書かれていない。これでは、制度がない会社との違いが分かりません。

会社の中では、「引越費用を負担するのは当然」「社宅制度については、面接で説明すればよい」と考えているかもしれません。しかし、求職者は面接を受ける前に、その会社を応募候補へ残すかどうかを決めています。

面接まで来てもらえなければ、用意している制度を説明する機会もありません。

「可能性があります」では、生活を想像できません

転勤について伝えるなら、制度名だけでなく、実際の運用も知りたいところです。

全社員が対象なのでしょうか。特定の職種だけでしょうか。転勤はどのくらいの頻度で行われているのでしょう。配属される可能性がある地域は、全国なのか、限られた地域なのか。辞令は何カ月前に伝えられるのか。本人の希望や家庭の事情について、事前に相談できるのか。

すべてを約束することは難しいと思います。人員の状況や事業の変化によって、将来のことを断定できない会社もあるでしょう。それでも、これまで実際にどのような転勤があり、会社がどのように対応してきたのかは伝えられます。「全国転勤の可能性があります」だけでは、大きな不安が残ります。

「本人と相談したうえで決定しています」「直近ではこの地域への異動がありました」「転居費用と借上社宅については会社が支援します」と具体的に書けば、少なくとも判断するための材料になります。

転勤経験者の話は、制度の説明より伝わります

会社が制度を説明するだけでなく、実際に転勤した社員へ話を聞く方法もあります。

転勤を言われたとき、最初に何を不安に感じたのか。引越しで困ったことはあったのか。会社から、どのような支援を受けたのか。転勤後の仕事や生活はどう変わったのか。

もちろん、私なら良かったことだけでなく、困ったことも聞きます。

知らない土地で生活を始めるのは大変だった。家族との相談に時間が必要だった。しかし、転勤先で担当した仕事が、その後の経験につながった。本人の言葉で語られると、制度の名称だけでは見えなかった現実が伝わります。

もちろん、「転勤すると成長できます」と一方的に良い話へまとめるのは違うと思います。求職者が知りたいのは、会社にとっての転勤の意味だけではありません。自分の仕事と暮らしが、どう変わる可能性があるのかです。

不利な条件ほど、小さく書かないほうがよいと思います

採用では、不利に見える条件を目立たせたくないという気持ちが働きます。

転勤、休日出勤、出張、繁忙期、屋外作業。詳しく書けば、応募者が減ってしまうのではないかと心配になりますが、小さく書いても、その条件がなくなるわけではありません。あとから知れば、応募辞退や内定辞退につながるかもしれません。入社後であれば、「聞いていた話と違う」という不信感になります。

私は、不利な条件ほど、早い段階で具体的に伝えたほうがよいと考えています。

ただし、条件だけを切り離して見せるのではありません。その理由、実際の運用、会社の支援、社員の経験まで一緒に伝えます。それでも受け入れられない人はいるでしょう。一方で、「この条件なら考えられる」「まずは詳しく聞いてみたい」と感じる人もいるはずです。

転勤があることを、魅力的に言い換える必要はありません。必要なのは、「転勤あり」という一行の向こう側を見えるようにすることです。

採用情報を見直すときは、会社にとっての当たり前が、求職者にとって大きな不安になっていないかを確認してみてください。制度はある。社員にも説明している。でも、応募前の人には伝わっていない。そのような情報が、まだ会社の中に残っているかもしれません。

参考資料

「何から直せばいいか

わからない」段階から、

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