主要企業で中途採用が新卒採用を上回る今、経験者に何を伝えるか

パソコンやプリンターが置かれた制作会社のオフィス

中途採用の求人を見るとき、私は「この会社は、入社する人に何を任せたいのか」という点に注目して見ています。ところが、仕事内容を読んでも、それがよく分からない求人があります。

「これまでの経験を生かせます」「即戦力として活躍してください」「幅広い業務に携われます」、例えばこんな内容。どれも間違いではないのですがイメージが湧きません。経験のある人が転職を決めるには、これだけでは材料が足りないと思います。

2026年度の採用計画について日本経済新聞社が調査した主要企業1,270社では、中途採用の比率が50.3%となりました。調査開始以来、初めて半数を超えています。新卒採用がなくなったわけではありませんが、企業の採用の重心が動いていることは確かです。

リクルートワークス研究所の調査でも2025年度下半期に中途採用を実施した企業は84.4%となり過去最高を更新しました。2026年度についても中途採用が前年より「増える」と答えた企業は19.7%で「減る」の5.9%を上回っています。

採用人数だけでなく、伝え方も中途採用に合わせて変える必要があります。

経験者は“今の会社と比べて”読みます

新卒者にとって、就職は初めて働く会社を選ぶことです。一方、中途採用の候補者には、現在または過去の職場という比較対象があります。給与・役職・人間関係・通勤時間・仕事の進め方など、すでに比較する基準を持っています。その人たちが考えているのは、単に「よい会社か」ではありません。

  • 今の職場を離れてまで、あるいは次の職場として選ぶ理由があるか。
  • これまでの経験は、どこで使えるのか。
  • 入社したあと、何を期待されるのか。
  • 仕事や暮らしは、どのように変わるのか。

そのような点まで見ながら求人票や採用ページを読んでいます。「アットホームな職場です」「研修制度が充実しています」といった説明だけでは転職後の姿を判断できません。あまりにざっくりしすぎています。

募集の理由を、きちんと書く

中途採用では、なぜ今この人を募集しているのかが気になります。欠員の補充なのか。受注が増えたための増員なのか。新しい事業を始めるのか。技術を次の世代へ引き継ぐためなのか。企業側には当たり前の事情でも、求人には書かれていないことがよくあります。

また、経験者へ転職理由を尋ねる一方で会社はなぜ前任者が辞めたのかを説明しているでしょうか。欠員募集なら応募者が本当に知りたいのはそこです。仕事量が多かったのか、人間関係に問題があったのか。それとも本人の事情だったのか。退職理由をすべて公開できなくても、会社が何を受け止め、何を改善したのかは伝えられます。

募集の理由が分からないと応募する側は想像で補うしかありません。

「退職者が続いているのではないか」
「入社した途端、一人で仕事を任されるのではないか」
「何を期待されているのか、面接まで分からない」

実際には前向きな増員であっても説明がなければ、その事情は伝わりません。募集の背景を書くことは会社の内情をさらけ出すことではありません。入社後の役割を理解してもらうための説明です。

「何ができる人」より、「何を任せるか」

中途採用の求人では、求める条件が細かくなりがちです。営業経験5年以上。業界経験者。管理職経験。資格保有者。パソコンの操作ができる方。企業が必要な条件を書くことは当然です。しかし、条件ばかりが並ぶと、会社が人を選ぶための文章になってしまいます。

経験者が知りたいのは、自分の経験を使ってどんな仕事を任されるのかです。

例えば、

「入社後は既存顧客20社を引き継ぎ、半年後を目安に新規提案も担当します」
「若手3名の営業同行と、見積内容の確認をお願いします」
「現在は担当者ごとに異なる作業手順を、経験を生かして整理していただきます」

ここまで書かれていれば、自分にできそうか・やりたい仕事かを判断できます。即戦力を求めるのであれば、会社側も「何に対する即戦力なのか」を示す必要があります。

変わることと、変わらないことを書く

経験者は仕事の内容だけで転職を決めるわけではありません。

役職はどうなるのか。誰の下で働くのか。どこまで自分で決められるのか。評価は何を基準にするのか。転勤はあるのか。給与は経験によってどのように決まるのか。こうしたことが曖昧なままでは、これまでの職場や、ほかの求人と比較できません。

もちろん、採用ページにすべての条件を確定して載せるのは難しいでしょう。経験や担当業務によって変わる部分もあります。それでも、

「役職は経験を踏まえて面談時に決定します」
「入社時は課長の下で実務を担当し、将来は部署の責任者を想定しています」
「転勤の可能性はありますが、本人と相談せずに決定することはありません」

など会社の考え方までは伝えられます。よいことだけでなく変わらないことや負担になる可能性も書いておく。そのほうが入社後の食い違いを減らせます。

中途採用には、中途採用向けの説明が必要です

会社概要・福利厚生・先輩社員の紹介。こうした情報は新卒にも中途にも必要です。ただし、新卒採用ページの年齢や写真だけを変えても、経験者向けの採用ページにはなりません。経験者に伝えるべきなのは、会社の魅力だけではなく、募集の背景・任せる仕事・期待する成果・経験の生かし方・入社後に変わることです。中途採用が増えるほど同じ経験を求める企業も増えます。

その中で求職者から選ばれる企業になるためには「経験者歓迎」と書くだけでは足りません。その人を、なぜ必要としているのかまで書く必要があります。

私は中途採用のページをつくるとき、まず経営者や現場の責任者に、「入社した人に、半年後、何ができていてほしいですか」と尋ねます。その答えが経験者に最初に伝えるべきことではないでしょうか。

参考:

「何から直せばいいか

わからない」段階から、

ご相談ください。

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