紙は減っている。でも、印刷物が全部同じように減っているわけではありません

印刷物やデザイン資料を机の上に広げた制作風景

印刷物の相談を受けるとき「今はもう、紙は減っていますよね」と言われることがあります。

確かに紙の需要は減っています。会社案内をPDFで送り、請求書をメールで届け、商品情報をホームページで更新する。以前なら印刷していたものが、画面で読まれるようになりました。

しかし、「紙が減っている」から「印刷物は何でも減っている」と考えてしまうと、それは少々早合点です。

2026年4月から6月の印刷業生産金額は前年同期比2.2%増でした。品目別に見ると出版印刷は4.6%減、商業印刷は2.1%減だった一方、事務用印刷は9.9%増、包装印刷は7.5%増となっています。

従業員100人以上の事業所を対象とした統計ですが、印刷物によって動きがかなり違うことは分かります。

減りやすいのは「情報を運ぶだけの紙」です

印刷物が担ってきた役割の一つは情報を人へ届けることでした。

商品一覧・価格表・会社概要・営業時間・地図。こうした情報はホームページへ載せたほうが更新しやすく、検索もできます。URLを送れば、印刷や郵送の費用もかかりません。内容が頻繁に変わるものや多くの人へ同じ情報を届けるものは、紙からWebへ移るのが自然です。

2025年の紙の出版市場は前年比4.1%減となり、50年ぶりに1兆円を下回りました。印刷メディア広告費も6.0%減。フリーペーパー・新聞・折込・DMなど多くの媒体が前年を下回っています。

以前と同じものを同じ部数だけ印刷し続ける仕事は確かに、これからも減ると思います。

その場で使われる印刷物には役割が残っています

一方で紙そのものが仕事をしている印刷物があります。例えば、

  • 店頭で商品を選ぶときに見るPOP
  • 商品の一部となるパッケージやラベル
  • 作業中に手元で確認する手順書
  • 学校訪問で先生へ手渡す採用案内
  • 商談の席で書き込みながら使う資料

こうした印刷物は情報を保存しているだけではありません。置かれる場所や渡される場面まで含めて役割を持っています。

2025年の印刷メディア広告費では、多くの媒体が前年を下回る中、POPは3.8%増となりました。商品を選ぶその場で目に入り次の行動を促すという役割はWebだけでは置き換えにくいからでしょう。包装印刷が伸びているのも印刷物が商品の一部だからです。箱や袋をなくしてWebページだけに置き換えることはできません。

同じ紙でも「あとでホームページを見てください」と伝える紙と、その場で判断や作業を助ける紙とでは残り方が違います。

DMも、数をまくだけでは難しくなっています

2025年のDM広告費は前年比5.4%減でした。ただし、DMなら何でも効果がないということではありません。

誰に送るかを決めず、大量に同じ内容を送るだけでは反応を得にくくなりがちです。一方で業種や地域、抱えている課題を絞り、相手に合わせて内容を変える方法は残っています。

JAGATもチラシは大きく減っている一方、配布まで含めた仕事やデジタル印刷を使った個別対応型の印刷は増えていると指摘しています。

例えば、すべての企業に「ホームページをつくりませんか」と送るのではなく、採用中の企業へ求人票や採用ページの見直しを提案する。印刷物ですべて説明しようとせず関心を持った人をQRコードから詳しいページへ案内する。

紙とWebを分けて考えるのではなく、それぞれに別の役割を持たせます。紙はまだ自社を知らない人の手元へ届く入口。Webは興味を持った人が詳しく確かめる場所。この組み合わせなら紙だけ、Webだけでは届かなかった相手へ伝えられます。

部数を決める前に、役割を決める

以前は会社案内なら数千部をまとめて印刷し何年も使うことがありました。しかし、事業内容も社員数も採用条件も変わります。印刷した直後から内容が古くなることもあります。これからは必要な相手に・必要な内容を・必要な部数だけつくるほうが現実的です。

会社全体を紹介する冊子を一冊つくるのではなく、営業用・採用用・学校訪問用など使う場面に合わせて分ける。詳しい情報や変更の多い情報はWebへ任せる。紙には、手渡したときに読んでほしいことだけを残す。

私は印刷物の打ち合わせで、用紙や部数を決める前に必ず「これは、誰に、どこで渡すものですか」と尋ねます。

その答えが曖昧なままでは、きれいに印刷しても使われないものになりやすいからです。

紙の市場が縮んでいることは事実です。ただ、紙の価値が一様になくなっているわけではありません。

自社で使っている印刷物には、紙でなければ果たせない役割があるでしょうか。反対に、紙だからこそ届く相手を見落としてはいないでしょうか。印刷物はいま「つくるか、やめるか」ではなく役割を問われています。

参考:

「何から直せばいいか

わからない」段階から、

ご相談ください。

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