私はネットの口コミをそのまま信じることが少なくなりました。
褒め方が妙に整っている。抽象的な美辞麗句ばかりで具体的な出来事が書かれていない。そんな投稿を見ると「これは本当に利用者が書いたものだろうか」と考えます。
これは読む側が疑い深くなったというだけの話ではありません。広告であることを隠し、第三者の感想のように見せる発信は法律でも問題とされ、実際に措置命令が出ています。
2026年8月、消費者庁は写真加工アプリ「SNOW」の利用サービスを提供する事業者2社へ措置命令を出しました。第三者に対価を提供し、事業者が示した方針に沿ってXへ投稿するよう依頼していたにもかかわらず、広告であることが明瞭に示されていなかったためです。消費者庁は、これを景品表示法上のステルスマーケティングに当たると判断しました。
広告らしく見せないことと、広告であることを隠すこと
広告をつくるとき、「できるだけ自然に見せたい」という要望を聞くことがあります。大きな文字で商品のよさを叫ぶより、実際に使っている場面や、利用者の率直な感想を見せたほうが伝わることもあります。広告らしさを抑えること自体が、悪いわけではありません。
ただし、企業が投稿内容の決定に関与しているのに、その関係を示さず、一般の利用者が自発的に書いた感想のように見せれば話は変わります。見る人は、企業の広告と第三者の感想を同じようには受け取りません。
広告だと分かっていれば「よい部分を選んで紹介しているのだろう」と考えながら読みます。しかし、普通の口コミに見えれば利害関係のない人の率直な評価だと受け取ります。
消費者庁が問題にしているのは、この受け取られ方の違いです。広告であるにもかかわらず広告であることを隠した表示は、景品表示法の規制対象になります。
口コミをお願いすること自体が問題なのではありません
「それなら、お客様へ口コミをお願いしてはいけないのか」と思う方もいるかもしれませんが、口コミの投稿をお願いすること自体が、すぐに問題になるわけではありません。分かれ目の一つは企業が投稿内容の決定に関与しているかどうかです。
「よろしければ、率直な感想をお寄せください」とお願いするのと、「星5を付けてください」「この言葉を入れてください」と条件を付けるのとでは、意味がまったく違います。
消費者庁のQ&Aでも星5の評価や推奨するコメントを条件にすると企業が投稿内容を決めた表示に当たると説明されています。その場合は、企業が関わった表示だと分かるようにしなければなりません。
口コミを書いてもらうために企業が文章を用意してしまうこともあります。お客様は手間が省けますが、掲載されるのは、その人の言葉ではなく企業がつくった広告文です。それを普通の口コミとして載せれば読む人に誤った印象を与えます。
「お客様の声」も選び方に注意が必要です
自社サイトに掲載する「お客様の声」も同じように考える必要があります。実際に寄せられたアンケートでも都合のよい回答だけを選んだり、よい部分だけを抜き出したりすれば、企業の意図が入った表示になります。
消費者庁は好意的な評価だけを選ぶ場合や、「よい点」と「悪い点」のうち、よい点だけを引用する場合も企業による表示に当たるとしています。
よい感想を掲載してはいけない、という話ではありません。
「当社がお客様へのアンケート回答から選び、抜粋して掲載しています」
「取材した内容を当社が編集して掲載しています」
「商品提供後に寄せられた感想を掲載しています」など、このように企業との関係や編集の有無が分かるようにすれば、読む人も判断しやすくなります。
隠さずに伝えることは必ずしも広告の効果を弱めるものではありません。むしろ、誰が、どのような立場で話しているのかが分かることで、内容を安心して読めるようになります。
整いすぎた口コミは、かえって疑われます
口コミは会社案内の文章とは違います。
言葉遣いも注目する点も人によって異なります。「説明が分かりやすかった」という人もいれば「返信が早くて助かった」という人もいます。
すべての口コミに同じ言葉が入り、同じような順番で会社を褒めていたら、読む人は不自然さを感じます。企業にとって都合のよい言葉に整えすぎるほど、その口コミが本物かどうかを疑われることがあります。
これからの広報ではよく見せることだけでなく「誰の言葉なのか」「企業がどこまで関わったのか」が分かることも大切になります。
広告なら広告としてきちんと伝える。口コミならお客様自身の言葉を残す。
自社サイトやSNSに掲載している「お客様の声」は誰が・どのような関係で書いたものか、読む人にも分かるようになっているでしょうか。
参考:


