AIを使うことと、仕事を変えることは別です

紙の資料や印刷物を机の上に広げて検討している様子

私はAIを毎日のように使っています。

調べ物をする。文章のたたき台を作る。いくつかの案を比べる。見落としがないか確認する。以前なら時間がかかっていた作業を短時間で進められるようになりました。便利です。もうAIを使わなかった頃には戻れないと思います。

ただ、使うほど気になることも出てきました。AIで仕事が速くなることと、仕事そのものが良くなることは同じではないということです。

AI活用はまだ業務の効率化が中心です

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は2026年7月に「DX動向2026」を公表しました。

調査によると企業へのAI導入は広がっています。一方で活用の中心は業務の効率化や迅速化です。新しい価値を生み出したり、会社の仕組みを変えたりするところまでは十分に進んでいません。これは不思議なことではないと思います。

最初は文章作成や要約、議事録作成といった使いやすい仕事から試すものです。作業時間が短くなれば効果も分かりやすいでしょう。

無駄な仕事まで速くなることがあります

仮に、毎週作っている会議資料をAIで早く作れるようになったとします。作成に2時間かかっていたものが30分で済めば大きな改善です。しかし誰もきちんと読んでいない資料なら、先に考えるべきことがあります。

その資料は本当に必要なのか。会議で何を決めたいのか。そもそも毎週開く必要があるのか。

AIは資料を速く作ってくれますが、その資料を作り続けるべきかまでは決めてくれません。使い方を間違えると、必要のない仕事を速く大量にこなせるようになります。無駄がなくなるのではなく、無駄の速度が上がることもあるのです。

「何に使えるか」より先に考えること

新しい道具が登場すると「何に使えるだろう」と考えます。もちろん試してみることは大切です。ただ、会社で本格的に使うなら、その前に「何を変えたいのか」を決める必要があります。

問い合わせへの対応を早くしたい。社内に散らばった情報を探しやすくしたい。担当者しか分からない仕事を減らしたい。お客様への説明を分かりやすくしたい。例えば、こういった事柄です。

目的が見えればAIを使う場所も見えてきます。反対に目的が曖昧なままでは導入すること自体が目的になります。それでは本末転倒です。「AIを使っています」と言えても、仕事の中身は以前と変わらないままです。

Webサイトや会社案内でも最初の整理が重要です

これはAIに限った話ではありません。Webサイトを新しくする。会社案内を作り直す。動画を作る。SNSを始める。どれも手段です。目的じゃありません。

制作の相談を受けると「そろそろ古くなったから」「他社もやっているから」という話から始まることがあります。それもきっかけにはなりますが、それだけでは何を作るべきか決まりません。

誰に見てもらいたいのか。見た人に何を知ってほしいのか。今は何が伝わっていないのか。制作後に何が変われば成功なのか。ここを考えないまま作り始めると、見た目は新しくなっても会社の課題は残ります。

制作技術が進み、作る速度が上がるほど、最初の整理が重要になります。

道具が新しくなっても、決めるのは人です

AIを使うべきか、使わないべきかという議論にはあまり意味がないと思います。使えるところでは使えばよい。ただし、AIを導入しただけで仕事が変わるわけではありません。何を残し、何をやめ、どこを変えるのか。それを決めるのは人です。

新しい道具を入れる前に、今の仕事を一度見直してみませんか。なぜ続けているのか。誰の役に立っているのか。もっと簡単にできないか。やめても困らないのではないか。AIは、その答えを考える材料を出してくれます。しかし最後に選ぶところまでは任せられません。

MRDでもWebサイトや会社案内をすぐに作り始めるのではなく、まず目的や伝える相手を確認します。必要なのは新しい制作物ではなく、今あるものの整理かもしれません。

道具が新しくなっても、何を変えるのかを決めるのは人です。

参考:
IPA「DX動向2026」広がるAI導入、DXは変われるか

IPA「国内企業のDX動向・AI活用動向のポイントを公表」

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