提案は多ければ親切なのか。AI時代に考える『一案』の意味

水面上は小さく、水面下に大きく広がる氷山

基本的に、お客様へデザインを提案するとき、私は一案しかお出しません。もちろん手を抜いているわけではありません。むしろ逆です。

AI時代、「手抜き」の形が変わった

Shopifyの創業者兼CEO、Tobi Lütkeが最近、AI時代になって「手抜き仕事」の形が変わったという話をしています。

以前なら、手抜きとはアウトプットを出さないことだった。しかしAIを使えば大量の文章やアイデア、コードなどを簡単に作れるようになりました。その結果、今度は大量のアウトプットをそのまま他人に渡し、確認や整理を相手にさせることが手抜きになってきたという話です。

Shopifyでは、こうした未確認のAIアウトプットを周囲へ投げる行為を「slop grenade(粗雑なAI生成物の丸投げ)」と呼んでいるそうです。

この話を聞いて、デザインの提案も少し似ていると思いました。

A案、B案、C案。何案も作って並べて「どれがお好きですか」とお客様に選んでもらう。一見すると親切です。たくさん提案しているので仕事をしているようにも見えます。でも私は昔から、少し違う考え方をしています。

提案とは、選択肢を増やすことなのか

お客様から話を聞き、目的や条件を整理し、誰に何を伝えるのかを考える。その上で色々な可能性を検討し、最も良いと思うものをこちらで選ぶ。そこまでが制作側の仕事だと思うからです。

だからMRDでは、基本的に「これが一番良いと思います」という一案をご提案しています。

その一案だけを見れば、考えたことも作ったものも少ないように見えるかもしれません。しかし、実際には逆なのです。

表に出ている一案は「氷山の一角」

表に出ている一案は、いわば氷山の一角です。

その水面下には、別のレイアウトや違うコピー、色や写真の使い方、見せ方の順番など、表には出さなかった色々な検討があります。

限られた時間をめいっぱい使って、考えて、比べて、捨てて、また考える。それを繰り返し、最終的に結果として残ったものを、一案としてお出ししています。複数案を考えていないわけではありません。

複数案を考えないのではなく、複数案の判断をお客様に丸投げしない。

ここには大きな違いがあると思っています。

もちろん提案したものが一発で完成するわけでもありません。

「ここはもう少しこうしたい」「この言葉は違う気がする」「写真はこちらを使いたい」そうした意見はどんどんいただきます。

一案を出して、そこから一緒に磨いていく

そこから修正して、さらに良くしていけばいい。私は修正を「やり直し」だとは考えていません。お客様とのやり取りを通じて精度を上げていくブラッシュアップだと思っています。

そのためMRDでは、他社でよく見かける「修正は2回まで」「3回目以降は追加料金」といった回数制限は基本的に設けていません。

一案を押しつけて終わりではなく、そこからお客様と一緒に詰めていく。納得できるところまでブラッシュアップすることも、提案の一部だと考えているからです。 → MRDのサービスについて

最初から何案も並べるのではなく、まずこちらで考え抜いて一案を出す。そして、その一案を土台に対話しながら磨いていく。MRDの提案は、そういう進め方です。

場合によっては、方向性そのものを比較する必要があり、複数案を出すこともあります。問題なのは複数案を出すこと自体ではありません。

「こちらでは決めきれないので選んでください」という状態で仕事を渡してしまうことです。

AI時代に価値が出るのは「出さない判断」

AIによって、この問題はこれからもっと大きくなる気がします。コピーなら100案。ロゴなら30案。レイアウトなら20案。作ろうと思えばいくらでも作れる時代になりました。だからこそ、たくさん作れること自体の価値は少しずつ下がっていくのかもしれません。

その代わり重要になるのは、

何を採用するのか。
何を捨てるのか。
なぜこれが良いと思うのか。

そこを考えて判断することです。AI時代に必要なのは、アウトプットを増やす能力だけではなく、出さないものを決める能力なのだと思います。

お客様の目に触れるのは、最後に残った一案だけ。でも、その一案の下には、見えない検討がたくさん積み重なっています。

提案とは選択肢を増やすことではなく、選び切ること。そして、選んだ一案をお客様と一緒に磨き続けること。少なくともMRDは、そういう仕事をしたいと考えています。

参考:The Knowledge Project「Tobi Lütke: AI Agents, Better Decisions, and the Future of Work」

「何から直せばいいか

わからない」段階から、

ご相談ください。

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