仕事柄、他社のホームページをよく見ます。どんなデザインなのか。どんなサービスを提供しているのか。料金はいくらなのか。どんな言葉で自社を説明しているのか。
競合を知ることは大切ですよね。ただ最近、少し違うことも考えるようになりました。
同業者を見すぎると、結局、同業者に似てしまうのではないか、と。
ピーター・ティールが警戒した「競争と模倣」
PayPal共同創業者として知られるピーター・ティールは、思想家ルネ・ジラールの「模倣的欲望」から強い影響を受けています。
人は周囲を見ながら、自分も同じものを欲しがる。競争相手を意識しすぎるうちに、いつの間にか相手と同じ方向へ向かってしまう。ティールは、こうした競争と模倣の関係を繰り返し語っています。
同じ場所にいて、同じ人たちと話し、同じ情報を見ていると、やがて同じものを重要だと思うようになる。すると、みんなが同じ指標を追い始めます。
売上。企業価値。成長率。資金調達額。話題性。もちろん、どれも重要です。ただ、同じ物差しで競争しているうちに、「まだ誰も重要だと思っていないもの」が見えなくなってしまう。
競争そのものより、競争するうちに相手に似てしまうことの方が、厄介なのだと思います。
競争相手を見続けると、競争相手に似てくる
これは、ホームページ制作の世界でも同じです。
他社の制作会社を調べていると、「採用サイト制作」「SEO対策」「動画制作」「ブランディング」「課題解決型Web制作」といった言葉が並びます。
それを見ながら、「うちにも必要だ」「このサービスも追加しよう」「この見せ方が流行っている」と考える。その結果、ホームページ制作会社のサイトが、だんだん似てきます。
これは別に悪いことではありません。良いものを参考にすることは必要です。
ただ、それだけを続けていると、競合との差をつくろうとしているはずなのに、逆に競合へ近づいてしまいます。少し不思議な話です。
見るべきなのは、競合ではなくお客様なのかもしれない
では、どこを見るのか。それは「お客様が実際に困っていること」です。
例えば中小企業では、「採用しても応募が来ない」「会社の良さをうまく説明できない」「ホームページが古いのは分かっているけれど、何を直せばいいのか分からない」「求人票と採用サイトと会社案内の内容がバラバラになっている」そんなことが起きています。
しかも、多くの場合、「ホームページを作りたい」と最初から考えているわけではありません。困ってはいる。でも、何を頼めば解決するのかが分からない。
ここに、制作会社がまだ十分に見ていない仕事があるのではないかと思います。
「何を作るか」の前に
だからMRDでは、「ホームページを作りませんか」ではなく、「まず、何に困っているのか聞かせてください」というところから始めます。
話を聞いた結果、ホームページを直すことになるかもしれません。採用サイトを作るかもしれない。求人票を直すだけかもしれない。パンフレットかもしれない。場合によっては、何も作らないという結論もあるでしょう。
制作会社なので、もちろん何かを作ることが仕事です。ただ、その一歩手前にある「何をすればいいのか分からない」という状態にも、もっと関われるのではないかと思っています。
自分は誰の物差しで仕事をしているのか
ティールの考え方から私が一番面白いと思ったのは、「逆張りをしよう」ということではありません。みんなが右へ行くなら左へ行けばいい、という話でもない。そうではなく、
「自分は今、誰の物差しで物事を見ているのか」
を時々疑うことなのだと思います。同業者ばかり見ていると、同業者が重要だと思うものを、自分も重要だと思い始めます。
だから時々、その輪から少し離れてみる。そして、お客様のところへ戻ってみる。「いま、何に困っていますか」と聞いてみる。
そこに、まだ名前の付いていない仕事があるのかもしれません。そして、それを見つけることの方が、競合との差を考えるより面白い。私はそんな気がしています。
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