
結論から言うと、円安・円高に「絶対的な正解」はありません。
為替は「良い/悪い」ではなく、誰にとって、何が、どの程度、どう変わるかで評価が分かれます。加えて、“中間”はあり得ます。ただしそれは「ちょうど真ん中の固定レート」という意味ではなく、経済にとっての“適正レンジ”という考え方になります。
目 次
まず整理:円安・円高とは
- 円安:同じ1ドルを買うのに、より多くの円が必要(例:1ドル=110円 → 150円)
- 円高:同じ1ドルを買うのに、より少ない円で済む(例:1ドル=150円 → 110円)
円安が「良い」と言われる場面
為替は、海外取引(輸入・輸出・海外投資)だけでなく、エネルギー・食料・原材料、そして物価や賃金、企業収益にも波及します。
1) 輸出企業・インバウンドに追い風
- 海外に売る製品が相対的に“割安”になり、売れやすくなる
- 海外で稼いだ外貨を円に戻すと、円換算の売上が増えやすい
- 訪日客にとって日本が安く感じられ、観光・宿泊・小売が伸びやすい
2) 国内に「需要」を引き戻しやすい
- 海外製品が割高になり、国内調達・国内サービスに仕事が戻るケースがある
ただし、円安は“国内コスト上昇”とセットになりやすいのが難点です。
円安が「つらい」と言われる場面
1) 輸入コストが上がる(原材料・エネルギー・食品)
- 仕入れがドル建て、海外依存の比率が高いほど直撃
- 価格転嫁が遅れる業種ほど利益が削られやすい
2) 生活コスト上昇 → 消費の伸びが鈍る
- 実質賃金が追いつかないと、国内需要が弱くなる
- 企業のコスト増が、じわじわ物価に乗る
円高が「良い」と言われる場面
1) 追い風仕入れ・燃料・海外サービスが安くなる
- 原材料やエネルギー、海外SaaS、海外広告、海外出張などが目に見えて効く
- 製造業だけでなく、デジタル費用にも波及する
2) 物価を抑えやすい(輸入品が安い)
- 家計にはプラスに働きやす
円高が「つらい」と言われる場面
1) 輸出企業の採算が悪化しやすい
- 円換算の売上が減る、価格競争力が落ちる
- 企業収益が弱ると、投資や賃上げにも影響しやすい
2) インバウンドが鈍る可能性
- 「日本が割安」という魅力が弱くなる
では“中間”はあり得るの?
あり得ます。ただし“固定された中間値”は現実的ではありません。
為替は市場で日々動くため、「常にここが中間」という一本線は引けません。一方で、現実にはこういう意味で“中間(適正)”が語られます。
“中間”の正体:適正レンジ(バランス点)
- 輸出だけが得をして、輸入が苦しいでも困る
- 輸入は楽でも、輸出が死ぬでも困る
- つまり、国全体で見たときに「極端さ」が薄いレンジが望まれる
ただし「適正レンジ」は、景気、金利差、資源価格、賃金、産業構造、地政学などで変わります。
だからMRD通信では、為替を“当てる”よりも、為替に振り回されない設計をおすすめします。
中小企業はどう考えるべきか
為替で最も危険なのは、円安・円高そのものより「急変」と「読めなさ」です。そこで、次の3点で整理すると判断が速くなります。
1) 自社は「円安メリット型」か「円安ダメージ型」か
- メリット型:外貨売上、訪日客需要、海外向け販売がある
- ダメージ型:輸入原材料・燃料・海外SaaS比率が高い、価格転嫁が遅い
2) 影響は「売上」より先に「粗利」に出る
為替の影響は、売上高よりもまず仕入れ・原価に来ます。だから見るべきは、PLの売上ではなく、粗利と原価構造です。
3) “対策を仕組みにする”のが最強
- 価格改定ルールを作る(例:原材料が一定以上動いたら改定)
- 仕入れ先・通貨・契約条件を分散する
- 可能なら一部を円建て契約に寄せる/為替条項を入れる
- 高付加価値化(「比較されにくい」設計)で転嫁しやすくする
- 仕入れ・在庫・見積条件を「月次」で見直す習慣を持つ
まとめ:どっちが良いかは「立ち位置」で決まる。狙うのは“極端の回避”
- 円安:輸出・インバウンドに追い風、ただし輸入コストと物価には逆風
- 円高:輸入コストと物価には追い風、ただし輸出・インバウンドには逆風
- “中間”:固定の真ん中ではなく、過度な円安/円高を避ける「適正レンジ」としてはあり得る
- 中小企業にとって重要なのは、相場観よりも粗利を守る仕組み化
