「怪しいメールのリンクは開かない」
これは、もう多くの人が知っているセキュリティ対策だと思います。
知らない相手から届いたメール。不自然な日本語。「至急確認してください」と書かれたリンク。こうしたものには、かなり警戒するようになりました。ところが最近は、少し事情が変わってきています。
メールを疑う人は増えた。では検索結果は?
例えばAppleのサイトを見たいとき。メールに書かれたリンクなら警戒する人でも、Googleなどで「Apple」と検索して、検索結果に出てきたサイトなら、そのまま開く人は多いのではないでしょうか。
検索結果、特に広告として表示される「スポンサー」の枠を悪用して、偽サイトへ誘導する手口は以前からあります。Google自身も、悪意のある広告を使って不正なソフトなどへ誘導する「マルバタイジング」と呼ばれるサイバー攻撃への注意を呼びかけています。
つまり、「メールではなく、自分で検索したから大丈夫」とは言い切れなくなっているのです。
URLそのものまで、本物そっくりになる
2026年10月、セキュリティ研究者が興味深い問題を報告しました。アルファベットに非常によく似たキリル文字などを組み合わせることで、ChromeやEdgeなどのChromium系ブラウザ上で、本物の有名企業のURLとほとんど見分けがつかない文字列を表示できる場合がある、というものです。いわゆる「ホモグラフ攻撃」と呼ばれる方法です。昔からある手口ですが、ブラウザ側も偽装を見抜く仕組みを強化してきました。
今回の研究では、その仕組みをすり抜ける組み合わせが確認されています。
今回報告されたものは、研究者による実証であり、この特定の方法を使った大規模な詐欺事件が確認された、という話ではありませんが…。とは言え、「アドレスバーを見れば安全」という考え方にも限界があることが分かってきました。
そして次の入口は、AIかもしれない
もう一つ気になるのがAIです。何かを調べるとき、「Googleで検索する」のではなく、「ChatGPTやCopilotなどに聞く」という人が急速に増えています。すると今度は、「AIが紹介したサイトだから大丈夫」という新しい思い込みが生まれます。
しかしAIも、インターネット上にある情報を参照します。そして攻撃する側も、検索エンジンだけではなく、AIに自分たちの情報を拾わせたり、特定の情報源を優先させたりする方法を考え始めています。
これは可能性だけの話でもありません。Microsoftは2026年5月、ソフトウェアのダウンロード先をAIチャットに尋ねた際、生成された回答の中に、攻撃者が管理する悪意あるサイトへのリンクが含まれていた事例を報告しています。
これまで検索結果を狙っていた「SEOポイズニング(検索エンジンの仕組みを悪用し、利用者を危険なWebサイトへ誘導する攻撃手法)」が、AIの回答にも入り込む可能性が出てきたということです。
AIそのものが詐欺をするわけではありませんので、問題は、私たちがAIを「新しい信頼できる入口」と思い始めていることなのだと思います。
AI検索については、以前のMRD通信「GEO対策は必要? Googleの答えをまとめると…『まず普通のSEOをしっかりと』です」でも取り上げました。検索そのものが、いま少しずつ変わり始めています。
詐欺の入口が移っている
以前は、メールに書かれたリンクを疑う。それである程度、防ぐことができました。
ところが今は、
メール → 検索結果 → 広告 → SNS → そしてAI と、入口そのものが広がっています。詐欺の技術が特別に変わったというより、人が「ここなら安全だろう」と思う場所へ、攻撃する側が移動している。そう考えた方が分かりやすいかもしれません。
これは詐欺に限った話でもないのかもしれません。以前「口コミに見せかけた広告が通用しなくなっています」でも書きましたが、ネット上では「何が書いてあるか」と同時に、「誰が、どの立場で見せているのか」を考えることがますます重要になっています。
大切なのは「どこから来たか」ではなく「何をしようとしているか」
では、何を警戒すればよいのでしょう。すべてのリンクを疑い始めたら、インターネットは使えません。そんな中、ひとつ基準になると思うのは、
ログイン、パスワード変更、決済、個人情報入力を求められたところで、一度立ち止まること。
メールから来たのか。検索から来たのか。AIが紹介したのか。そこではなく、「ここから先で重要な情報を入力しようとしている」という場面を警戒することです。
銀行、通販サイト、Apple、Googleなど重要なサービスなら、検索結果やAIの回答から入るのではなく、普段使っている公式アプリやブックマークから開く。少し面倒ですが、この方が安全だと思います。「怪しいメールを開かない」。その常識は、もちろん今でも大切ですが、それだけでは足りなくなってきました。


