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倒産状況から未来へのヒントを探る
2024年、企業倒産は件数ベースで1万件を超え、2013年以来11年ぶりの高水準となりました。
そのほぼすべて、10,004件が中小企業であり、しかも負債額の小さい「小規模倒産」が目立つという特徴があります。
内訳を見ると、サービス業・小売業・建設業・製造業など、ほぼすべての業種で前年を上回る増加となっており、「特定の業種が悪い」のではなく、経済全体にわたる構造変化の波が押し寄せていることが分かります。
一見すると暗いニュースですが、視点を変えると「もしこの層のうち◯%でもDX・省人化投資に踏み切れていたら、どれだけの会社が生き残れたのか?」を考える材料にもなります。
今回は、あえて“たられば”の仮定計算を通じて、倒産急増の中に潜む「明るい未来へのヒント」を数字で探ってみます。
ステップ1:前提となる数字の整理
まずは、計算の土台となる数字をざっくり整理してみます。
- 2024年の企業倒産:10,006件(11年ぶりに1万件超)
- そのうち中小企業:10,004件(ほぼ全部が中小)
- 2024年上期だけで、負債5,000万円未満の「小規模倒産」が2,898件と、小さい会社の倒産が顕著。
- 倒産要因として「人手不足」「後継者不在」「原材料・人件費高騰」が過去最多水準まで増加している。
一方で、中小企業のDXの実態を見ると、従業員100人未満の企業の約6割がDX専任部署・担当を持っていないという調査があります。
別の調査では、主観ベースの自己評価でも、実際に業務の高度なデジタル化・競争力強化まで進んでいる企業は全体の3割未満とされており、「DX未着手〜途上の企業が多数派」であることが分かります。
ここから先は、「あくまで仮定」として、数字を置いていきます。

ステップ2:小規模倒産のうち、DX余地があった会社数を仮定する
仮定計算の対象を「負債5,000万円未満の小規模倒産」に絞ります。
- 年間の倒産10,006件のうち、小規模倒産の比率を「6割」と設定
- 上期時点で4,887件中2,898件が小規模倒産=約6割だったため、通年も同程度と仮定。
- 10,006件×60%=約6,000件の小規模倒産(以下、すべて概算)。
- この小規模倒産6,000件のうち、「DX・省人化で救えた可能性がある層」を20%と設定
- 倒産要因として、「人手不足」「人件費・原価高騰」「労務環境の悪さ」が目立ち、とくに建設・物流・サービスなどで人手不足倒産が過去最多ペース。すべてがDXで解決できるわけではないものの、「業務の見直し・省人化・IT活用が進んでいれば延命できたかもしれない」層を全体の2割と仮置きします。
- その1,200件の中で、「本気でDX・省人化投資に踏み切れたであろう企業」をさらに50%と設定
- 現実には、資金・人材・時間の制約があり、すべての企業が一気に変われるわけではありません。経営者の意識・金融支援・外部パートナーの有無などを踏まえ、「2社に1社が動けた」として50%と仮定します。

この仮定を前提にすると、「もし小規模倒産層6,000社のうち10%(=600社)がDX・省人化投資に本気で取り組めていたら、年間倒産1万件のうち約600件は“生き残れたかもしれない”」という計算になります。
1年は営業日約250日と考えると、600社÷250日=1日あたり約2〜3社。毎営業日2〜3社分の倒産は、やり方を変えることで避けられたかもしれないなと思います。
ステップ3:生き残れた600社が生む付加価値をざっくり試算
次に「救えたかもしれない600社」が生み出したはずの付加価値をイメージしてみます。
- 小規模企業1社あたりの年間売上を、ざっくり「1億円」と仮定
- 中小企業白書や各種統計を見ると、小規模企業の売上規模は業種により幅があるものの、ここでは分かりやすさを優先して1億円と置きます。
- 600社×1億円=年商ベースで600億円
- 粗利率を30%と仮定すると、600億円×30%=180億円相当の付加価値が市場から消えた計算になります。
- 従業員1社あたり10人と仮定すると
- 600社×10人=6,000人分の雇用が、「倒産しないケース」では維持されていた可能性がある。
- 日本全体の労働力から見れば小さい数字かもしれませんが、「一地方」「一業種」に限定して見れば、決して無視できない規模です。
もちろん、これはあくまで“ざっくり仮定”の計算です。
しかし、DX・省人化にあと一歩早く踏み切っていれば、毎営業日2〜3社|年間600社|付加価値180億円|雇用6,000人分は守れたかもしれないのです。そのイメージ、わかっていただけますでしょうか。
ステップ4:「仮定計算」から見える明るい未来
この仮定計算から見えてくるのは、「過去を悔やむ話」ではなく、「これから守れる会社がどれだけあるか」という未来志向の視点です。
- 2024年時点で、DX推進度合いが高い中小企業は3割に満たないとも言われています。
- 裏を返せば、「残り7割の企業には、これから生産性を一段引き上げられる余地がまだまだある」ということです。
政府や金融機関も、中小企業のDX・省人化を後押しする補助金・税制・長期資金供給などの枠組みを拡充しており、「やりたくてもできない」状態を少しずつ解消しつつあります。
DX人材が社内にいなくても、ITコーディネーターやDX認定制度など、外部の伴走支援を受けやすい環境も整ってきました。
「もしこの層のうち10%がDX・省人化投資をしていたら、何社は生き残れたか?」という仮定計算は、過去の“失われた600社”を嘆くためではなく、「これからの数年間で、同じ規模の“600社分”を救うために、自分たちは何を変えられるか?」を考えるための出発点です。
史上最悪クラスの倒産増の裏側には「まだ間に合う会社が、まだたくさんある」という、静かな希望も同時に存在しています。
その会社の1つひとつが、これからDX・省人化に踏み出すことで、日本経済全体の底力をじわじわと押し上げていく。そのプロセスを、MRDの計算シリーズとして一緒に追いかけていきたいと思います。

DX・省人化は“コスト削減”などではなく、“失われるはずの付加価値を守る投資”なのではないでしょうか。
