【計算シリーズ】宝くじ販売は20年で3割減、その低迷理由を探る。また、「1等7億円」を当てるためには、いったい何枚買えばよいの?

■ 宝くじを計算する

【計算シリーズ】ではありますが、今回のメインテーマは「宝くじは、なぜ低迷したか?」でもあるので、先に「1等7億円」の“期待値”を提示してしまいますね。

【結論】1枚300円の「1等7億円」ジャンボ宝くじの場合、1等だけの“期待値”は約35円程度にしかなりません。

計算するもの:1等の当せん確率が 2,000万分の1 のとき、1枚300円のうち「1等分の期待値」
:期待値(円)= 7億円 × (1 / 20,000,000)

例(1等分のみ)
7億円 ÷ 2,000万 = 35円
つまり、1枚300円のうち “1等の価値”として平均35円分(他等級は別枠)という見え方ができます。大きい数字(7億円)に引っ張られますが、実際は“確率が価格を決めて”いるわけです。

「1等7億円(当選確率2,000万分の1)」だけを狙って考えますと、平均して約6億円分(=2,000万枚)買ってようやく1回当たる程度の確率になります。

計算するもの:1等を1回当てるまでに必要な“平均購入枚数”と支出
:必要枚数= 20,000,000枚(当せん確率の逆数)
支出= 20,000,000枚 × 300円

なお、「平均」という言葉には注意点があります。確率論的には2,000万回(6億円分)買っても当たらない人もいれば、1回目(300円)で当たる人もいるということです。

MRD通信

■ 「宝くじ販売が20年で約3割減」とされる背景

次に、このブロックでは「宝くじ販売が20年で約3割減」とされる背景を、行動心理と市場構造の両面から整理していきます。あわせて、年末ジャンボ1等(7億円)の当せん確率「2,000万分の1」と同程度の“起きにくさ”の例を提示しますね。

宝くじ(全国自治宝くじ等)の売上は、2005年前後をピークに低下傾向が指摘されてきました。05年に約1.1兆円規模がピーク、その後は減少し、近年は7,000~8,000億円台という整理が一般的です。宝くじ公式サイトでも令和6年度の販売実績額が 7,598億円 と示されています。

宝くじ購入理由の上位は「賞金目当て」、非購入理由の上位は「当たると思わない」ということです。これは“偶然性商品”として極めて自然です。問題は、この認識が20年で強化される方向に環境が変わったことにあります。考えられる理由をA~Eに挙げてみます。

理由A:主力購買層の高齢化・縮小(固定客が減った)

宝くじは「定期的に買う人」の比重が大きい商品です。その固定客の高齢化・引退(買い控え)で、自然減が起きやすい。売上減の背景として、主力層の高齢化が指摘されています。

理由B:代替商品の増加(toto等へ分流、さらに“別の夢”へ浮気。選択肢が増えた)

2001年以降、スポーツ振興くじ(toto)などが選択肢として定着し、宝くじから顧客が流れた点が指摘されています。

加えてこの10数年は、少額から始められる投資・ポイント運用・サブスク娯楽など、「300円を使う先」の競合が爆発的に増えました。結果、“夢を買う”支出が分散します(宝くじだけが比較対象ではなくなったのですね)。

理由C:デジタル購買行動との摩擦(若年層の取り込みに失敗)

宝くじは「衝動買い(ついで買い)」の比率が高い一方で、若年層の購買導線はスマホ中心です。

オンライン販売・決済・体験設計の遅れが若い世代の取り込みに響いた、という指摘があります。(近年はネット購入を強化していますが、遅れてキャッチアップした局面とも言えます)

理由D:「確率の可視化」が進み、“当たらなさ”が納得されやすくなった

年末ジャンボ1等の当せん確率は 2,000万分の1 と明確に語られるようになりました。ネット上の解説が増え、期待値(平均すると戻ってくる金額)のような考え方も広まりました。

例えば、年末ジャンボ(300円)の期待値が概ね150円程度、という説明もあります(上記も参照ください)。宝くじは制度設計上、売上のうち当せん金は約46.5%で、残りは収益金(自治体へ)や経費等になります。

つまり「当たれば大きい」一方で、「平均的には半分弱しか戻らない」ことが理屈として理解されやすくなり、非購入理由の「当たると思わない」が強化されていったというわけです。

理由E:景況感というより“合理化”が進んだ。「夢より生活」

長期的な景気低迷と可処分所得の伸び悩みで「夢より生活」が優先される価値観への転換が起きています。

また、昔は「年末の恒例行事」「職場で話題」という“社会的な買う理由”が機能していましたが、コミュニティの弱体化、働き方の分散で「みんなで買う」「話のネタ」が弱まると、最後は確率と期待値だけが残ります。そこで「当たると思わない」側に一気に倒れていった感は否めません。だって、実際、(ほんの一部を除いて)当たらないのですから。

年末ジャンボ1等の当せん確率は 2,000万分の1。この“起きにくさ”を体感していただきたくて、以下を挙げます。分かりやすい同程度の例です。厳密な一致ではなく、同オーダー=同程度の希少性です。

  1. コインを24回投げて、全部表が出る
    確率は 1/224=1/16,777,2161/2^{24}=1/16,777,2161/224=1/16,777,216。2,000万分の1にかなり近い。
  2. 約231日(=約7.6か月)分の“秒”の中から、狙った1秒を一発で当てる
    2,000万秒 ≒ 231.5日なので、「この期間のどこか1秒」をピンポイントで当てるのと同程度。
  3. “2,000万人の中から、事前に指定した1人”を当てる
    例えば「ある巨大都市圏の人口規模から、指定した1人を一発で選び当てる」感覚です。
  4. 東京ドーム約5万5千人が満員の状態の「約363個分」の観客の中から、たった1人だけ選ばれる確率。
  5. 10kg入り米袋(約50万粒)を40袋並べ、その中の1粒だけに印を付けて、目をつぶってそれを引き当てる確率。

いずれも「大量の中のたった1つ」を引き当てる感覚で、直感的にはほぼ不可能と感じられるレベルです。

■ ジャンボ宝くじCMシリーズ「ジャンボきょうだい」は、若者層に買ってほしいからだと思うが、効果なし?

妻夫木聡さん・吉岡里帆さんら人気俳優をそろえたジャンボ宝くじCMシリーズ「ジャンボきょうだい」。シリーズ化もされ、広告投下量も多く、必死にPRしている様子がうかがえます。

電通報では、2020年からのジャンボ宝くじCMを「従来の発売告知に加えたブランドCM」と位置づけ、“これまで買ったことのない若年層”を主ターゲットに「魅力や楽しさを伝える」狙いが述べられています。しかし、効果は“部分的”と見るのが妥当でしょう。

ここは成果が出ています。年末ジャンボは、2021年12月度・2022年12月度にCM好感度で首位を獲得したと報告されています。つまり「見られていない/嫌われている」タイプの失敗ではありません。

ただ、ネット上では、ジャンボきょうだいCMに対して「うざい」「さむい」といったネガティブな評価も一定数あり、クリエイティブ自体が必ずしも若者に刺さっていないという指摘も見受けられます。

しかし、購入者全体の裾野は直近調査でも縮小しており、平均購入額も下がっています。この状況だけを見る限り、CM単体で市場の下げトレンドを反転させるほどの強い効果が出たとは言いにくいです。

なぜ「好感CM」でも購入につながりにくいのか

若年層にとっての最大障壁は、まさに提示した通り 「当たると思えない」です。この障壁は、好感・認知よりも強く、“確率に対する納得”と“買い方の習慣化”を同時に解かないと動きにくいでしょう。

まとめ

  • 「ジャンボきょうだい」は狙い(若年層開拓)は正しい。「若者向けの入口づくり」としては機能している
  • 広告評価(好感度)としては成功寄り
  • ただし、市場全体の縮小(確率不信+購買習慣の断絶+偶発購買の減少)を、CMだけで覆すのは難しい
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