今年見るべき映画「シン・ゴジラ」
先日、映画『シン・ゴジラ』を観てきました。「ゴジラ FINAL WARS」(2004)以来12年ぶりに東宝が製作した日本版「ゴジラ」映画(第29作目)であり、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の庵野秀明が総監督・脚本を務めています。この『シン・ゴジラ』は、これまでの28作のゴジラ映画の集大成とも呼べるもので、まさしく2016年の今だからこそ見るべき、リ・デザインの賜物のような映画でした。
単なる怪獣映画を超えた完成度
SFではあるものの、「現実(ニッポン)対虚構(ゴジラ)」というのがキャッチコピーのこの『シン・ゴジラ』。(今の日本、現代の状況や暮らし、政治の中に突如、巨大生物が出現したらどうなるの?)という空想というか仮定を前提として脚本が練りに練られており、単なる怪獣映画、特撮映画という枠を超え、完成度の高い映画、世界に誇れる日本映画になっていました。
ヒットの理由は「共感力」
観客動員数も順調で、ネットでも大いに話題になっています。なぜここまでヒットしているのでしょうか。もちろん「脚本が!」「特撮が!」が直接的な理由ですが、MRDでは【共感力】にあると思っています
共感力の根源は《もしも》のチカラ
これまでの怪獣映画の設定・脚本にありがちな非日常な世界ではなく、徹底して日常に沿った描き方をしているため、映像のひとコマ、ひとコマにとてつもない吸引力がありました。その吸引力を生み出しているのが【共感力】であり、この【共感力】の源泉が製作陣が映画製作過程で、数多く投げかけたであろう《もしも》です。
「もしも」から生まれる徹底したリアリティ
(もしも・・・現代日本に巨大生物が出現したらどうなるの?)。そこには現時点で存在しない地球防衛軍も、特殊能力者たちの秘密結社も、勇猛果敢に一人で立ち向かうスーパーヒーローもいません。描かれているのは逃げ惑う市井の人々であり、巨大な災害に見舞われた国を動かす政治家であり官僚たちです。(もしも巨大生物が出現したら国家中枢はどうなるのか?何を考え、どんな命令系統で、どんな思考の元に対応してくれるのか?対抗策は?武器は?権限は?人々の命は?)。無数につみあがってい《もしも》と《なぜ》。それが脚本に厚みをもたらし、ヒットしている理由の根幹だと感じました。みなさんもぜひ映画館で観て、その面白さを体感してみてください。