物理的な広がり・スペースを示す「広場」。集会の席やその雰囲気を示す「場が盛り上がる」とか「場がしらける」といった表現。関係性が生まれる機会 や居どころを示す「場がある」「場がない」といった使われ方。周囲の想像とはかけ離れていることを示す「場違いな発言」「場違いな服装」など。
場(ば)という言葉は、物理的な空間のみならず、自分と他人との関係性にかかわる意味を含んでいます。
「場」とは、自分と他人(相手・第三者)との関係性が生み出した磁場(見えない空間)と言えるかも知れません。
「場」という考え・概念が注目される背景には、インターネットや携帯電話の普及によって、人と人がリアルに顔を合わせてコミュニケーションする 機会と場所・能力が減ってきたこと、いわゆる「公衆」という場・概念が年々薄れてきていることに起因するのではないかと想像できます。
進化のスピードも速くなり、これまで常識であったこと、スタンダードであったことも、常識の枠組みから追いやられることも少なくありません。
さまざまなビジネス的な枠組みも、よくいえば柔軟に、悪く言えばなんでもありで変化する現代です。ソーシャルがキーワードになる現代です。
企業内外で、あるいは個人生活の面で、今後ますます「場」という概念の重要性が問われることになると思っています。
ちなみに、野中郁次郎氏は「場」という共有空間が存在しないと知識創造は行われないと唱えました。知識創造の3要素として、物理的場・仮想的場・心理的場があると。以下、まとめますと。
知識創造に結びつく「よい場」の条件
- 独自の意図・目的・方向性・使命などを持ち、自己組織化されていること
- 参加者のコミットメントが存在すること
- 内部からと外部からの2つの視点が同時にもたらされること
- 参加者が直接経験をすることができること
- 物事の本質に関する対話が行なわれること
- 参加者が自由に出入りし、共有された文脈が絶えず変化していけること
- 形式知を実践を通じて自己に体化することができる実践の場であること
- 異種混合が行なわれること(MRD注:単一的・単独的・一方通行ではないこと?)
- 即興的な相互作用が行なわれること
「よい場」が活性化するための要素・条件
- 自律性:場を共有するメンバーが知識創造に向って自律的に活動すること
- 創造的カオス:組織に意図的に危機感を導入したりすることにより、組織に緊張をもたらし、メンバーの注意を問題解決に集中させるための混沌
- 最小有効多様性:組織が秩序とカオスのバランスを保つためのもの
- 冗長性:日常業務を遂行する上ですぐに必要のない情報が組織に蓄積されている状態
- 愛と信頼
文献 遠山亮子・野中郁次郎 (2000) 「よい場」と革新的リーダーシップ:組織的知識創造についての試論 一橋ビジネスレビュー 2000 Sum.-Aut.伊丹敬之 (1999) 場のマネジメント:経営の新パラダイム NTT出版