日本の中小企業も学べる!ドジャース球団のビジネスセンス、マーケティング戦略とは

2025年10月30日
MRD通信

いま、ドジャースに学ぶ

“Before this season started, they said the Dodgers are ruining baseball.
Let’s get four more wins and really ruin baseball!”

「シーズンが始まる前に、『ドジャースは野球を台無しにしている』と言われた。
あと4勝して、本当に台無しにしよう!」
— デーブ・ロバーツ監督(ロサンゼルス・ドジャース)

これは、メジャー最高勝率を記録したブルワーズ相手に4連勝し、ドジャースがワールドシリーズ進出を決めた際に、勝利セレモニーの舞台上で放ったひとこと。

世界一の球団が実践するビジネス戦略

今年、ロサンゼルス・ドジャースの総年俸は3億5,000万ドルを超え、メッツやヤンキースを上回るリーグ最高額となりました。そのため「金満球団」と呼ばれることがあります。潤沢な資金を背景にスター選手を獲得し、勝利を“買っている”と批判されることがあるからです。

「台無し」とは、(とても強すぎて)メジャーリーグ野球をつまらなくしているという意味です。しかし、そこには単なる資金力ではなく、戦略的なマーケティング思考と長期的な投資哲学があると思わざるを得ません。

この姿勢こそ、日本の中小企業がいま学ぶべきビジネスセンスです。


1. 「先に動く」ことで市場をつくる

ドジャースは常に、誰よりも早く動いてきました。

1947年、黒人差別が根強い時代にジャッキー・ロビンソンを起用。
1995年、日本人がまだ軽視されていた時代に野茂英雄と契約。
そして2023年、大谷翔平選手と10年総額7億ドル(日本円で約1,015億円)という前例のない契約を結びました。

なお、大谷翔平選手の「二刀流」を育てたのは、最初に彼を受け入れたロサンゼルス・エンゼルスでした。しかしエンゼルスは率直に言って、彼が本来の能力を発揮できる「勝てるチーム」ではありませんでした。

チームは長年プレーオフ進出すら果たせず、エース級の選手がいても勝ち星を重ねられない構造的な弱さを抱えていました。

さらに、マイク・トラウトやアンソニー・レンドンらへの大型契約が財務を圧迫し、必要な戦力補強にも踏み切れなかったのです。

結果として、大谷選手が「勝利に貢献できる環境」を求めてチームを離れるのは必然でした。エンゼルスは優れた人材を育てながらも、組織としてその力を活かせる体制を築けなかったのです。

ドジャースはその失敗を見逃しませんでした。大谷選手が二刀流として覚醒する前から日本に足を運び、粘り強く交渉を続け、チームの哲学を示しました。

批判を恐れず、常識が追いつく前に動く。それが、世界を動かすリーダーの条件です。

ドジャースはいつも“時代の1歩先”を見ています。中小企業もまた、他社がやってからではなく、「誰もまだ動かない分野」に挑むことで市場を創造できます。

2. 投資は「支出」ではなく「信頼資産」

ドジャースの7億ドル契約は、一見すると常軌を逸した金額です。

しかし実際には、契約締結からわずか2年足らずで、スポンサー・物販・放映権などを通じて契約金に匹敵する規模の経済効果を生み出したと分析されています。(2025年現在でまだ2シーズン目の途中)

具体的な報道根拠

  • 新規スポンサー収入:約7,000万ドル(=約105億円)
    大谷効果による日本企業12社の新規契約で発生(DodgerBlue報道、2025年1月)
  • グッズ・ユニフォーム売上:数千万ドル規模
    MLB全体で大谷ユニフォームが3年連続1位(Reuters報道、2025年9月)
  • 放映・ライセンス・観客動員増などの波及効果:年間約2~3億ドル規模の上乗せ
    (米ロサンゼルス・タイムズ、Sports Business Journal等の分析)

これは「お金を使った」のではなく、「ブランドを強化するために投資した」と言うべきでしょう。お金を“費やす”のではなく、“信頼を積み上げる”という発想。中小企業の広告や採用も、短期回収より「信頼を買う」投資として見直すべきだと確信します

3. 批判を恐れず、「理念」を貫く

ドジャースは1990年代から2010年代にかけて、20年以上の低迷を経験しました。それでも短期的な結果に流されず、「球団としての理念」を変えなかった。
ロバーツ監督の言葉――「台無しにしよう!」には、批判されても信念を貫く覚悟が込められています。

経営も同じです。

売上が落ちても、顧客が減っても、理念を軸に行動する企業は最終的に強くなります。「周囲にどう見られるか」より、「自社が何を信じるか」。それがブランドを形づくる根幹です。

4. “物語”を売るというマーケティング

ドジャースの強みは、単に勝つチームであることではありません。黒人差別に立ち向かった歴史、日本人選手を受け入れた文化、そして多様な人材が共に働くという理念――。その「ストーリー」自体がブランドになっています。

日本の中小企業も、製品やサービスの説明だけでなく、「なぜこの仕事をしているのか」という物語を伝えることが、最強のマーケティングになります。

資金ではなく、戦略。
中小企業こそ、ドジャースのように「理念を利益に変える経営」を目指すべき時です。

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