目 次
そもそも「スマホ対応していないホームページ」とは?
一言でいえば、スマホで見たときに“読む・探す・押す・送る”がスムーズにできないホームページです。
技術的には、画面サイズに合わせてレイアウトが変わる「レスポンシブ(Responsive Web Design)」になっていない状態を指すことが多いです。レスポンシブは「どの画面サイズでも見やすく・使いやすく表示する設計アプローチ」のことです。

代表的な“スマホ未対応あるある”(現場で起きる症状)
- 文字が小さすぎて、拡大しないと読めない
- 横スクロールが発生する(画面からはみ出す)
- メニューが小さく、押し間違いが起きる(タップしづらい)
- 電話番号がタップできない、地図が使いづらい
- フォームが崩れる/入力欄が小さくて入力しづらい/送信ボタンが見切れる
- PDFや表がスマホで読めず「あとでPCで…」のまま離脱する
つまり、スマホで来た人にとっては「入口は開いているのに、中で動けない」状態になりがちです。
スマホからのホームページ閲覧者は“ほぼ半分”
日本国内でも、閲覧は PCとスマホが拮抗しています。たとえば2025年11月の日本では Desktop 52.55% / Mobile 47.45% というデータがあります。「スマホは少ないから後回し」が成り立ちにくい理由が、ここにあります。
さらにGoogleは、検索の評価・インデックスにおいて モバイル版を基準に扱う(モバイルファースト)ことを明示しており、移行は完了しています。
何が“損失”になるの? (3つに分解できます)
「ホームページをスマホ対応にしていないだけ」で起きている損失は、感覚ではなく“計算”できます。
スマホ未対応が生む損失は、主に次の3つです。
- 問い合わせ損失(最も計算しやすい)
スマホ閲覧者が「読めない・押せない・入力しづらい」で離脱 → 問い合わせが減る - 信頼損失(CVRが下がる)
見づらい=雑に見える → 比較検討の段階で落ちる(特にBtoBで効く) - 集客損失(SEOの土台が弱くなる)
Googleがモバイル版を基準に評価するため、スマホ体験が弱いと中長期の流入に響きやすい
まず“数字に落とす”なら、1.問い合わせ損失 が最短距離です。
◆ 計算式:問い合わせ件数の損失を出してみます
使う数字(GA4で取得可能) ※ GA4(Googleアナリティクス4)とは、Googleが提供する次世代の無料アクセス解析ツール
- 月間セッション数:
S - スマホ比率:
M(日本は概ね約半分が目安) - 本来のスマホCVR(問い合わせ率):
CVR_ok - 現状のスマホCVR:
CVR_now
① 問い合わせ損失(件/月)
損失問い合わせ数 = S × M ×(CVR_ok − CVR_now)
② 粗利(または売上)損失(円/月)
- 商談化率:
SR(問い合わせ→商談) - 受注率:
WR(商談→受注) - 1件あたり粗利:
GP
粗利損失 = 損失問い合わせ数 × SR × WR × GP
◆ 例:BtoBサイトの“現実的な”試算
仮に、次のような会社を想定します。
- 月間セッション:S = 2,000
- スマホ比率:M = 0.47
- 本来のスマホCVR:CVR_ok = 1.0%(0.010)
- 現状のスマホCVR:CVR_now = 0.2%(0.002)
- 商談化率:SR = 50%(0.5)
- 受注率:WR = 30%(0.3)
- 1件あたり粗利:GP = 300,000円
① 問い合わせ損失(件/月)
損失問い合わせ数
= 2,000 × 0.47 ×(0.010 − 0.002)
= 2,000 × 0.47 × 0.008
= 7.52件/月(約8件)
② 粗利損失(円/月)
粗利損失
= 7.52 × 0.5 × 0.3 × 300,000
= 7.52 × 0.15 × 300,000
= 338,400円/月
年間にすると
338,400 × 12 = 4,060,800円/年(約406万円)

「スマホ対応はデザインの話」と見なされがちですなのが、実態は 売上(粗利)の取りこぼしなのです。
◆ 速度でも損する(スマホ対応+表示の速さ)
スマホは“見られる”だけでなく“待てない”も重要です。
モバイルの読み込みが1秒遅れると、コンバージョンが最大20%下がり得る、というデータもあります。 つまり「スマホ対応したが重い」でも、損失は生じているのです。
3分でできる:自社版の損失算出(社内で回る)
- GA4で「デバイス別」に
- セッション数
- 問い合わせ(フォーム送信、電話タップ等)の数
を確認 - スマホCVR(現状)を計算:
CVR_now - 目標CVR(本来)を設定:
CVR_ok
- 実務的には「PCのCVRの50〜80%」を暫定目標に置くと進めやすい - 上の式で「問い合わせ損失→年間粗利損失」まで出す
- 改修費と並べて、投資判断にする
まとめ:来ているのに、取り逃がしている
スマホ対応していないホームページは、来ているのに、取り逃がしている状態です。
セキュリティ面の損失:「直接」より「セットで起きる損失」
結論から言うと、「スマホ未対応であること」自体が、直接“脆弱性”を生むわけではありません。
ただし実務上は、スマホ未対応のサイトは 「古い設計・古い運用」のまま放置されている比率が高く、結果としてセキュリティ面の損失(事故リスク・信用毀損・復旧コスト)を抱えやすい、という関係になります。
1) セキュリティ面の損失は「直接」より「セットで起きる」
直接起きるわけではない
- レスポンシブ未対応(スマホで見づらい)=それだけで情報漏えい、という因果ではありません。
ただし“セットで起きやすい”典型
スマホ未対応サイトにありがちな「放置状態」が、セキュリティ事故の温床になります。
- 問い合わせフォーム周りが弱い
スパム送信、改ざん、なりすまし(BtoBだと特に痛い)などの被害に繋がることがあります。 - HTTPのまま / HTTPSが不完全
入力情報が暗号化されず、盗聴・改ざんリスクが増える。さらに、HSTS(常時HTTPSを強制)などが入っていないケースも多い。 - アクセス制御や権限周りが甘い
例えば「アクセス制御の不備」は、現実に非常に多い重要リスクとして扱われています。
2) セキュリティ面の“損失”は何で発生するか
スマホ未対応サイトが抱えやすいセキュリティ損失は、主にこの4つです。
- 事故対応コスト(調査・復旧・外部ベンダー費・再発防止)
- 機会損失(サイト停止、問い合わせ停止、広告停止)
- 信用毀損(取引先審査で不利、採用応募が減る、炎上リスク)
- 二次被害(メールなりすまし誘発、顧客への詐欺導線になる等)
参考までに、データ侵害コストは世界平均でも高額になり得ることが報告されています。
