【計算シリーズ】毎日3杯珈琲を飲みます。自分で飲む分くらいの珈琲豆を自家栽培するために必要な費用はいくらか?

私は大の珈琲好き。事務所では自分で淹れて1日に3杯はいただきます。自分で挽くことはしませんで、挽いた珈琲豆を買ってきて淹れて飲んでいます。ですが、この物価高です。「1日に3杯」なので、なかなかの出費です。そこで考えました。

自分で珈琲の木を育て、豆を採取したら安上がりなのでは?

MRD通信

まぁ、結論は、調べる前からだいたいわかっていたのでショックというほどではありませんが(ええ、ちっともショックではありませんとも)、まったくお話にならない割の合わなさでした。以下、暇な方はお付き合いください。

まず、コーヒーノキは寒さに弱く、アラビカは日中70〜80°F(約21〜27℃)、夜間60〜65°F(約16〜18℃)を好み、55°F(約13℃)を下回ると落葉しやすく、凍結には耐えません。しかも花が付くまで3〜4年かかります。日本の一般家庭で「飲む量をまかなう」前提だと、ボトルネックは苗代ではなく、光・温度・湿度を維持する環境コストであることがわかりました。ですが、計算は続けます。

まず、ここでは、1杯=豆10gで計算します(本当は12gくらい欲しいのですが)。すると年間必要量は、1日1杯で3.65kg、1日2杯で7.3kg、1日3杯だと10.95kgです。(3杯 × 10g × 365日)

研究レビューでは、アラビカ(※)1本あたりの乾燥生豆収量は90〜480g/年程度とされ、USDAなどでは焙煎豆→生豆換算に1.19を使っています。前回と同じく、家庭栽培の現実ラインとして1本あたり焙煎豆200g/年で計算します。

この条件だと必要本数は、10.95kg ÷ 200g = 54.75本なので、約55本です。かなりうまく採れて400g/本でも約28本、逆に100g/本しか採れなければ約110本です。

※:アラビカ豆とはコーヒーの品種である「アラビカ種」の豆のことを言います。コーヒー豆は植物学的には「アカネ科コフィア(コーヒーノキ)属」に分類される樹木の種子が原料です。果実の中の種子を乾燥させ、殻を除去したものがコーヒー豆(生豆)です。コーヒーノキ属には数十~120以上の種があると言われますが、コーヒー用として栽培されているのは、アラビカ種|カネフォラ種|リベリカ種のわずか3種です。

UCCのトリビアでは「木1本で約40杯。毎日コーヒーを飲む人なら1年に約10本必要」と書かれていました。

中間の「1本あたり焙煎豆200g/年」で計算しますと、必要本数はこうなります。

1日1杯なら約18本。1日2杯なら約37本。うまくいって400g/本採れても、1日2杯で約19本。逆に100g/本しか採れなければ、約73本です。1日3杯なら約55本という計算です(10.95kg ÷ 200g = 54.75本)。

つまり、数本育てれば家のコーヒー代が浮く、という考えは甘い。 たいへん苦い。超苦い。コーヒーは1本あたりの収量が小さい作物でした。

しかし、初期費用をかなり甘めに設定して考えを続けてみます。

苗は1本3,300〜4,400円前後、10号級の鉢は約580〜700円、観葉植物用の土14Lは約1,380円、肥料は500円前後で買えます。つまり、1本あたりざっくり約6,000円です。

この前提でいくと、植物本体だけで、
1日1杯分 = 約11万円
1日2杯分 = 約22万円
1日3杯分 = 約33万円 (55本 × 6,000円) です。

好条件の28本であっても約16.8万円、低収量の110本なら約66万円。なお、苗そのものは国内農園の販売例で1本4,400円クラスがありました。

しかもこれは、枯死、植え替え追加、病害虫、失敗分をほぼ無視した数字です。現実には、ここに環境設備が乗ります。コーヒーノキは寒さに弱く、安定生育には温暖な環境が必要で、実がつくまで数年単位かかります。又吉コーヒー園の苗販売情報でも、開花見込みから初収穫、本格収穫まで年単位で待つ前提になっています。つまり、33万円前後を払っても、すぐには飲めないということです。

だが、悪あがきでも、さらに突き詰めていきますと…

観葉植物+たまに自家豆を飲む前提の「鉢植え数本」レベルでは、前回同様「自分の消費量を賄う」という発想はほぼ不可能です。

  • 苗5本程度では、うまく成長しても年間生豆2.5kg(500g×5本)前後が理論上の上限。
  • 実際の日本のベランダ栽培では、そこまで安定して取るのは難しいので、「年に何回か、自家豆で1杯」という世界観のまま。

費用感は前回と同じオーダーでOKです。

  • 初期費用:
    • 苗木数本+鉢+用土+道具+簡易ビニールなど → 2万〜5万円程度。
  • 年間費用:
    • 肥料・薬剤・水道・暖房補助 → 5,000〜1.5万円程度。

→ 前提が1日3杯に増えても、「趣味鉢植えコース」の費用レンジ自体はそんなに変わりません。
 ただし「自給率」はほぼゼロ〜ごくわずかのまま、という整理になります。

「1日3杯分=年14〜16kgの生豆を自給できるだけの本数を植え、温室で育てる」前提で再計算します。

必要本数から逆算

  • 年14〜16kgの生豆
  • 1本あたり生豆500g前後(40杯相当)とすると、30〜32本が理論値。
  • 不作年やロスを考えて、40本くらいをターゲットにすると安定しそう。

初期投資(40本規模を想定)

国産コーヒーのハウス栽培記事では、30本程度で苗木代4.5万円(1本1,500円)という例があり、ビニールハウスは30万〜80万円とされています。

40本規模の最小クラスを想定すると:合計:おおまかに「最低でも40万前後、そこそこのハウスなら60〜90万円」ゾーン

項 目概算費用根 拠
ビニールハウス30万〜80万円小規模・簡易仕様でもこのレンジ
苗木40本約6万円1,500円×40本
土壌・肥料初期分約2〜3万円元肥・土壌改良
灌水設備約3万円簡易自動潅水など
農具・棚など約1〜2万円スコップ、剪定バサミなど

年間ランニングコスト(40本規模を想定)

ハウス栽培の維持費例をベースに、40本規模に当てはめると以下のイメージです

項 目概算費用/年根 拠
電気代(加温・換気)5万〜10万円冬の保温がコストの大半
水道代約1万円潅水用
肥料・農薬約1万円本数増えてもまだこのオーダー感
消耗品・修繕5,000〜1万円ビニール補修、農具など

年間ランニング:おおよそ 8万〜13万円。

本数が20本であれ40本であれ、ハウスという箱の存在がコストの中心なので、「1日1杯」前提より「1日3杯」前提のほうが設備の利用効率は上がる、とも言えます。

前提を次のようにして考えてみます

  • 初期投資:60万円(ハウス+苗+諸々)
  • 耐用年数:10年(ざっくり)
  • 年間ランニング:10万円
  • 収量:生豆16kg/年(焙煎後約13kg)
  • 1杯あたり焙煎豆12g → 年間約1,083杯(13,000g ÷ 12g)
  • 人件費は…

計算すると

  • 初期投資を10年で償却 → 年6万円
  • 年トータルコスト:6万(初期償却)+10万(ランニング)=16万円
  • 1杯あたり:16万円 ÷ 1,083杯 ≒ 約148円

生豆価格換算にすると

  • 16万円 ÷ 16kg = 1kgあたり1万円

市販のスペシャルティ〜高品質国産クラスが1kgあたり数千〜1万円台、超高級国産で10万円/kgという例もあるので、「1日3杯飲める自家農園」としては、かなり「いい遊び」です。が、しかし、そんなにメチャクチャな原価ではないレンジに突入します。

必要な生豆量約14〜16kg/年
必要な木の本数30本前後(安全策をとるなら40本)
趣味の鉢植えコースだと2〜5万円+年5,000〜1.5万円
小規模ハウス本気コースだと1日3杯分を賄う前提なら、1杯あたりざっくり150円前後の原価感
初期投資40〜90万円(モデルとして60万円程度)
年間コスト8〜13万円前後(モデルとして10万円)

「毎日3杯を自家栽培でまかなう」は、ロマンとしては最高で、計算してみると「普通に高級豆を買って飲んだ方が断然安い」けど、「ストーリーとしては圧勝」!

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