素人の消費者の意見をイチイチ聞かないから
素人の消費者の意見をイチイチ聞かないから、ヒット商品や名作は生まれるのです。
そういうと決まって必ず
「消費者の意見を聞かないとは何事だ」とお叱りを受けたりします。
これは大変な、しかもよくありがちな誤解です。
商品開発と商品改良とでは、そのプロセスや必要とされる付帯業務がまったく異なると考えるからです。商品を市場に送り出すまでは商品者の意見は聞かなくてよく、つまり開発者個人のひらめきとアイデアと直感(これはいける!売れるはず!)だけで、 突っ走っても良いものです。
※ここで言いたいのは、まったく聞く必要がない・聞くんじゃない!ということではなく、聞いてばかりいてはダメですよってことです。
消費者(生活者。生活のプロ!)の声に耳を傾けなければいけないのは、特に商品を産んだ後です。売る側の都合を最優先する論理は、マーケティング的には甚だよろしくないことは私も大いに認めるところです。
最近、話題なのでジョブズの語録を引っ張り出して見ますと(そこまで崇拝者ではありませんが)、ジョブズは、だいたいこんなことを言っています。
何が欲しいかを消費者に聞いて、それを与えるだけではだめ。
製品をデザインするのはとても難しいこと。多くの場合、消費者(人間?)は形にして見せてもらうまで自分が何が欲しいかなんてわからないもの。
ジョブ”ズ”の言うとおりだと思います。たくさんのユーザーの声、消費者の声を集めて聞いてしまうと、利いてばかりいるとどうなるか・・・
最大公約数的な、エッジの利いていない商品が生まれる。
開発側は素人の意見を聞きすぎてはいけないのです。もちろん、責任はすべて開発側が追わなければいけないことは当然です。(反対に、素人の意見を 「門外漢は黙ってろ!」と拒否することも同じくらい愚かな間違いですので、ご注意ください。門外漢の意見は”気づき”が含まれていることも多く、大切です)
「消費者事前調査では約90%から支持されていたのに、売れないとは不思議ですね。(売れないのは私のせいじゃない)」なんて間違っても言い訳してはいけないのです。
企業のトップは「斬新なアイデアをもってこい」とよく言うそうですが、それを潰さずに認めてあげること、懐の深さを示してあげることも、同等に重要な事ですね。
商品(商業的プロダクト)と作品(芸術的プロダクト)は同じではありませんので、ここでは、商品(商業的プロダクト)に限って話を進めました。
これまで名作だ!と言われている映画やドラマといった作品(芸術的プロダクト)が、周囲の声に耳を傾けない監督の思いつきや突っ走りだけで生まれてきていることも、また事実でありましょう。黒澤明しかり、富野由悠季しかり。
斬新な商品・作品(の種)は、個人のアイデアの中だけにあるのです。独りで創ると書いて「独創性」なのです。