「人手不足」の次は「原材料高」──小規模事業者を直撃する”複合倒産”の正体|おまけ)活用できる公的支援制度

2025年、「人手不足倒産」が過去最多の442件(東京商工リサーチ)を記録したというニュースは、多くの経営者に衝撃を与えました。しかし今、倒産の現場では静かに、そして確実に「次の波」が押し寄せています。その名は「原材料高倒産」。すでに水面下では、これが人手不足と同時並行で小規模事業者を追い詰める「複合倒産」の時代に突入しているのです。

MRD通信

まず、現状の数字を整理しましょう。

  • 人手不足倒産:442件(2025年|前年度比+43%)
  • 物価高倒産:949件(2025年|5年連続で過去最多)
  • そのうち原材料起因が43.3%と最大。人件費24.8%、エネルギー24.2%が続く
  • 2026年1月:76件(前年同月比+24.5%)、2月:69件(同+4.5%)と増勢が継続
  • 物価高倒産のうち、資本金1千万円未満が65.2%従業員5人未満が52.6%

この最後の数字が、すべてを物語っています。倒産しているのは「大きな会社」ではない。街の飲食店、町工場の下請け、地域の小売業 ── そういった私たちの身近な事業者たちです。

コスト増を価格転嫁できるかどうか。これが生死を分ける分岐点です。

大手企業は、バイヤーとの交渉力があります。ある程度の内部留保もある。しかし、従業員5人未満の零細事業者は、「値上げしたら客が逃げる」「取引先に断られる」という恐怖から、コスト増を自社で吸収し続けます。そして、体力が尽きたとき、静かに廃業届を出すのです。

2026年1月の物価高倒産76件のうち、破産が71件(93.4%)。廃業ではなく、破産です。借入金を抱えたまま倒れています

今後とくに注視すべき業種は以下の通りです。

業 種危機度 リスク背景
飲食店 2026年2月の物価高倒産で単独14件と突出。値上げが集客減に
食料品製造業 輸入原材料・包材コスト増が直撃。円安再進行で加速懸念
建設業 物価高倒産247件で業種別最多。資材・人件費の二重苦
繊維・アパレル製造中~高 前年度比で倒産件数が64→104件に急増
飼料・農業関連中~高 円安による輸入飼料・肥料コスト上昇が次の焦点

飲食店はとりわけ深刻です。食材・ガス・水道光熱費と、あらゆるコストが上昇しているにもかかわらず、値上げが集客減に直結するため、価格転嫁が最も難しい業態のひとつです。

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「倒産ニュース」を遠い話と思っている経営者ほど、危ない。MRDが支援先企業に必ずお伝えしている3つの視点をご紹介します。

  1. コスト構造の「見える化」 原材料費・エネルギー費の月次推移を必ず把握する。「なんとなく苦しい」を数字にする
  2. 価格転嫁の「仕組み化」 値上げを「お詫び」ではなく「根拠ある提案」として伝える。原価上昇の可視化が交渉力になる
  3. 顧客との「関係密度」を上げる 価格転嫁が通る相手とそうでない相手を見極め、前者との取引を深める

帝国データバンクは「2026年の倒産トレンドは、物価高から人手不足・人的要因へ移行していく」と分析しています。しかし実態は、どちらか一方ではなく、同時に来る。それが「複合倒産」の時代の本質です。

コスト増・人手不足が同時進行する今、国や中小企業庁は複数の補助金・支援制度を整備しています。「知らなかった」では損をします。規模や目的別に整理しました。


① 中小企業省力化投資補助金(人手不足対策)
IoT・ロボット・自動化設備の導入を補助する制度。2026年3月に制度改定され、カタログから選んで申請できる「カタログ注文型」と、自由に設備を選べる「一般型」の2種類があります。

  • 補助率:小規模事業者 2/3中小企業 1/2
  • 補助上限:従業員5名以下で最大 750万円、21〜50名で最大 3,000万円(一般型)
  • 大幅賃上げを行うと上限が 1.5倍 に拡大

② 小規模事業者持続化補助金(販路開拓・広報強化)
チラシ・ウェブサイト・新商品開発など「販路開拓・生産性向上」の取り組みを幅広く補助。小規模事業者が最初に検討すべき制度です。

  • 補助率:2/3(赤字事業者は 3/4
  • 補助上限:通常枠 50〜200万円、賃金引上げ特例 最大250万円
  • 対象:商業・サービス業は従業員5名以下、製造業は20名以下

③ 新事業進出・ものづくり補助金(設備投資・高付加価値化)
原材料高への対応として「高付加価値化」や「新事業参入」に設備投資する際に活用できます。賃上げと組み合わせると補助率・上限が優遇されます。

  • 補助率:中小企業 1/2、小規模事業者 2/3(大幅賃上げで全社2/3)
  • 補助上限:従業員5名以下 750万円、21〜50名 1,500万円
  • 申請には事業計画書の作成が必要

④ 業務改善助成金 / 賃上げ助成金(賃上げ対応)
最低賃金引き上げへの対応や、設備投資と連動した賃上げを支援します。

  • 賃上げ率3%以上:1人あたり 4万円
  • 賃上げ率6%以上:1人あたり 最大7万円
  • 業務改善助成金は生産性向上のための設備投資が前提条件

⚠ 申請には「事前準備」が命です

補助金は後払いが原則です。費用を先に立て替え、採択後に請求する仕組みのため、資金繰り計画を並行して立てておくことが必須です。また制度は公募回ごとに要件が変わります。最新の公募要領と、各地の商工会議所・よろず支援拠点への相談を積極的に活用してください。

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