目 次
- ■ 2026年3月期の日本主要自動車メーカーの「営業利益見通し」
- ー 概要と読み解きのポイント
- ■ なぜ、日本の自動車メーカー各社にとって非常に厳しい収益環境なのか?その原因は?また、世界の自動車メーカーすべてが厳しいのか?或いは日本のメーカーだけなのか?
- ー 日本メーカー収益悪化の主因
- ー 世界の自動車メーカーも厳しい?
- ー 日本メーカー特有の要素
- ■ 海外メーカーと比べた日本メーカーの競争力の違いは何なのか?
- ー 強み(日本メーカー)
- ー 弱み・課題(日本メーカー)
- ー 海外メーカーの特徴と競争力
- ■ 日本の自動車メーカーがソフトウェア競争力を強化するためには?
- ー 具体策一覧
- ー 現在の課題
- ■ 日産が巨額赤字で、スズキが営業利益でホンダを越えようとしている….という事実
- ー 日産が大赤字に陥った背景・構造
- ー ホンダ・日産と比べてスズキが堅調な理由
- ー 優勝劣敗の根本的要因
- ■ 各社で差がついた事業戦略や経営判断の具体例
- ー トヨタ
- ー ホンダ
- ー 日産
- ー スズキ
- ■ 日本の各メーカーについて。EVの波に乗れなかった時点でオワコンなの?
- ー 的を得ている部分
- ー 的外れな部分・補足
- ■ 今後日本メーカーがEV競争で優位に立つ戦略は?
- ー 日本メーカーが優位に立つための主な戦略
- ■ 日本の各メーカーがエンジン技術を生かして生き残る道はある?
- ー 日本メーカーが生き残る主な戦略・道
- ■ EVには電気が必要。日本の電力需要・供給は?
- ー 現状と発電供給力
- ー EV普及による課題
- ー インフラ課題
■ 2026年3月期の日本主要自動車メーカーの「営業利益見通し」
先日、2026年3月期の日本主要自動車メーカーの「営業利益見通し(前年比)」が発表されました。各社の営業利益額と、前年からの増減率も記載されていました。
以下の数値からは、2026年3月期は日本の自動車メーカー各社にとって非常に厳しい収益環境になる、という予想が明確に読み取れます。
- トヨタ:3兆4000億円(前年比29.1%減)
- スズキ:5000億円(前年比22.2%減)
- ホンダ:5500億円(前年比54.7%減)
- スバル:2000億円(前年比50.7%減)
- マツダ:500億円(前年比73.1%減)
- 三菱自動車:700億円(前年比49.6%減)
- 日 産:−2750億円(損失、前年比データなし)
ー 概要と読み解きのポイント
- すべてのメーカーが前年から大幅な減益、あるいは赤字見通しとなっています。
- トヨタは依然として圧倒的な利益を見込むものの、減益幅も大きいです。
- 日産は唯一「赤字(−2750億円)」となっており、厳しい状況が示唆されています。
- マツダ、ホンダ、スバルの減益率が特に大きく、業界全体の収益性低下が鮮明です。

■ なぜ、日本の自動車メーカー各社にとって非常に厳しい収益環境なのか?その原因は?また、世界の自動車メーカーすべてが厳しいのか?或いは日本のメーカーだけなのか?
日本の自動車メーカー各社の収益が大きく悪化している主な要因は「米国を中心とした関税引き上げ」「為替変動」「原材料価格の高騰」など、グローバルな外部環境の悪化が大きく影響しています。
特に、いわゆる“トランプ関税”の影響は極めて大きく、例えばトヨタ自動車だけで通期1兆4500億円もの減益要因となっています。
- 原材料価格の高騰、為替変動、世界的な需要減速などが主な要因と考えられます。
- 海外市場環境や電動化投資負担の増大など、メーカーごとの事情も強く影響しています。
ー 日本メーカー収益悪化の主因
- 米国の関税引き上げ(トランプ関税):日本メーカーの米国市場依存度が高いため、関税は収益直撃。
- 円高:2025年~2026年にかけて円安効果が薄れ、為替損益悪化。
- 原材料・物流コスト増:半導体不足や物流混乱時のコスト上昇、エネルギー価格高騰も影響。
- 生産・認証問題:品質管理やサプライチェーン対応への追加投資負担。
- 販売台数・利益率の低下:日産・マツダなど一部企業は販売減&利益悪化が顕著。
ー 世界の自動車メーカーも厳しい?
- 欧米メーカー:米国や欧州も電動化・コスト増・市場鈍化で利益低下傾向。ただし各社の損益状況に差。
- 中国メーカー:値下げ競争により利益率が大きく低下、粗利益率は大幅下落。
- 世界規模での市況悪化:世界的に需要回復が鈍く、電動化投資負担や競争激化でグローバルに厳しい状況。ただし米国現地生産比率が高い企業や中国新興勢は相対的に有利。
ー 日本メーカー特有の要素
- 北米市場依存度の高さゆえ、米関税ショックの直撃。
- 円高時の為替ダメージ。
- 国内での生産コスト上昇や少子高齢化による国内需要の伸び悩み。
まとめ:総じて、日本メーカーが特に大きな収益悪化を被っている要因は「米国の関税」と「円高」のダブルパンチによるものですが、世界の自動車メーカーも電動化コスト増や値下げ競争で広く苦しんでいます。
■ 海外メーカーと比べた日本メーカーの競争力の違いは何なのか?
日本の自動車メーカーは、海外メーカーと比較していくつかの競争力の違いがあります。特に近年は電動化・ソフトウェア化・現地生産などの分野で欧米・中国メーカーに対し強みと弱みが明確になってきています。
ー 強み(日本メーカー)
- 圧倒的な生産規模と品質管理(例:トヨタ)
- ハイブリッド技術や内燃機関分野で世界屈指の技術力
- グローバルで安定した販売網とサービス体制
- 多様なパワートレイン戦略(EV一辺倒ではなく、HV・FCVも並行展開)
- 耐久性・信頼性を重視した商品設計
ー 弱み・課題(日本メーカー)
- EV分野やソフトウェア開発での遅れ(BYDやテスラ、米中新興勢に後れを取っている)
- 意思決定のスピード(伝統的な企業文化による柔軟性不足が指摘される場合あり)
- 海外現地生産比率の低さ(一部メーカーは米国や中国現地生産を急速に拡大中だが、欧米勢や中国新興ほどではない)
- 価格競争力(中国勢の積極的な値下げ攻勢に対応しづらい)
- 新興国市場や若年層へのブランド訴求力
ー 海外メーカーの特徴と競争力
- 中国系メーカー(例:BYD):圧倒的なEV普及率と価格戦略、現地生産能力の拡大
- 米国・欧州系新興:ソフトウェア(SDV=Software Defined Vehicle)開発力で差別化、テスラやリヴィアンなどは柔軟な商品設計も優位
- 現地市場への対応力と意思決定の速さ
まとめ:現時点でトヨタなど一部日本メーカーは安定した競争力を維持していますが、EVとソフトウェアの分野では遅れが明確であり、中国・米国メーカーが新たな脅威となっています。また、伝統的な強み(品質・信頼性)が差別化要素になる一方、価格や柔軟性では海外勢に押されがちです。
■ 日本の自動車メーカーがソフトウェア競争力を強化するためには?
日本の自動車メーカーがソフトウェア競争力を強化するためには、いくつかの具体策がすでに進行中です。SDV(Software Defined Vehicle)分野において官民連携で投資・開発・標準化に力を入れています。
ー 具体策一覧
- 企業間連携・共同開発
- トヨタ・ホンダ・日産など主要メーカーが車載OSや車体制御ソフトの共通化や標準化を進めている。
- 複数社でミドルウェアやAPIの共同開発とオープンソースコミュニティ構築。
- ソフトウェア人材の大幅増強
- 外部IT企業やパートナーとの連携を拡大し、ソフトエンジニアを増やす(例:ホンダは2030年までにソフト技術者を2倍に増員を目指す)。
- トヨタは子会社(ウーブン・バイ・トヨタ)とサプライヤー(デンソー等)で「デジタルソフト開発センター」を新設。
- 車載OSと基盤技術の独自開発
- トヨタ:Arene OSの開発で共通プラットフォームを構築し、効率化と拡張性を両立。
- ホンダ:ASIMO OSを中心にクラウド連携・Over The Air(Wi-Fi、携帯電話網、Bluetoothなどの無線通信を利用して、デバイスのソフトウェアやファームウェアを遠隔から更新する技術) アップデート強化。
- 政府主導の「モビリティDX戦略」
- 経産省主導でSDVの標準化、部品・規格の共通ルール化、人材育成、国内生産基盤強化。
- 2030年に日本車SDVの世界販売1200万台を目指し、技術政策で後押し。
- Over The Air による機能拡張・収益化
- 継続的なソフトアップデートによって、購入後も機能追加やサービス提供し収益拡大。
- テスラのような「外部業者がアプリ開発できるオープンSDV」実現も視野
ー 現在の課題
- ソフトウェア開発力・人材確保で海外勢に遅れがあり、技術のオープン化・協業領域拡大が求められている。
- 日本メーカーは品質・安全性で強みを持つが、ソフト・サービス・スピードでは欧米・中国勢に追いつくための投資が急務です。
■ 日産が巨額赤字で、スズキが営業利益でホンダを越えようとしている….という事実
日本の自動車メーカー間でここまで業績格差が鮮明になった背景には、各社の市場対応力・商品戦略・コスト構造・経営判断の違いが累積的に現れていることが大きな要因です。特に日産の巨額赤字やホンダの急減益、スズキの相対的な善戦は、事業の軸や強み・弱みの違いが明確に表れた結果といえます。
ー 日産が大赤字に陥った背景・構造
- 米国・中国市場での競争劣化とシェア低下
- 電動化やソフトウェア開発での遅れ、魅力的な新型車不足
- 取引先トラブルや生産トラブル(例:半導体不足、工場火災)
- コスト削減施策が十分に進まず、販売減に伴う固定費負担が重い
- 構造改革「Re:Nissan」の効果が限定的で経営再建に遅れ
ー ホンダ・日産と比べてスズキが堅調な理由
- インドなど新興国を主戦場とし、コスト競争力・現地最適化が卓越
- BEV(電動車)への対応は一歩遅いが、ガソリン・ハイブリッドで収益確保
- 営業利益率が比較的高水準で維持できている
- 巨大な投資負担が少なく、グローバル構造転換リスクが相対的に小さい
ー 優勝劣敗の根本的要因
- グローバル競争の激化:特にEV・ソフトウェアで中国・米国勢との圧倒的な競争
- 市場分散・現地依存リスク:北米一極集中構造、現地生産・現地対応力に遅れ
- 商品開発力・投資余力:強い資本力/ブランド/技術持つ企業が圧倒
- わずかな判断・タイミングの差が業績に直結し、連続的な差となって現れる
まとめ:この10年で「商品軸の変化(EV/ソフト)」「市場のアジアシフト」「経済リスク顕在化」「経営ガバナンスの巧拙」……多くの分岐点で素早く舵を切った会社が生き残り、遅れた会社や一極集中型の会社が苦境に陥る構図になっています。今後も優勝劣敗は一層明確化していく見通しです。
■ 各社で差がついた事業戦略や経営判断の具体例
日本の主要自動車メーカー間で業績や競争力に差がついた「事業戦略」「経営判断」の具体例は以下の通りです。これらは、リーダー企業と苦戦企業で「勝敗」を分けた分岐点でもあります。
ー トヨタ
- 「マルチパス戦略」:EV、ハイブリッド、燃料電池とパワートレイン多様化。海外現地ニーズ重視で収益基盤が広い。
- 徹底した生産・サプライチェーン改革。危機発生時にも柔軟な現場判断を重視。
- 巨額投資をソフトウェア関連企業(ウーブン・バイ・トヨタなど)や、自社OS開発へシフト。
- 米国関税ショックに備え、現地生産の比率を積極的に上げる先見性。
ー ホンダ
- 多角化(自動車+二輪+航空+ロボット)。ただし事業軸分散のため自動車領域の収益源が薄い面も。
- ホンダの最新利益の主軸は“二輪事業”。四輪は部分的なヒット車種を除き総じて利益貢献が弱く、経営上の課題となっています。
- 北米EVはGMと提携して共同開発へ転換。自前主義にこだわらず効率性重視へ。従来は「ノープレー・ノーエラーを排せ(失敗を恐れない挑戦)」や「技術者主導」「夢を追いかける文化」が根付いていましたが、多様化・効率化・成果主義への転換期に入っています。
- 2040年全車EV宣言という大胆な目標設定。ただ開発資金・人材確保で苦戦し減益。
- なお、ホンダの金融サービスは、主に自動車ローン・リース事業などを通じて安定的かつ高水準の利益を生み出しています。「自動車メーカー」だけでなく「金融サービス会社」としての顔も強まっており、利益安定化の重要基盤となっています。
ー 日産
- 世界初量産EV「リーフ」投入で一時先行するも、先行者利益を活かせず次のヒット商品に結びつかなかった。
- 経営の迷走で特別損失とリストラを反復。構造改革「Re:Nissan」実行(工場閉鎖・売却、ブランド撤退、国内外での事業縮小)によって、巨額の特別損失(5000億円など)を数年連続で計上。が一時的財務改善に留まり、本質的な商品力回復や企業文化改革は停滞。
- 2024年のホンダとの経営統合交渉が破談し、孤立路線で再建を図るも、再び巨額赤字。本社ビルなど資産売却と人員削減のみに頼り、根本的な競争力回復につながらなかった。
- 中国など海外展開の軸が十分強化できなかった。
ー スズキ
- インド・東南アジア市場への早期進出と現地化重視戦略で生き残り。インド・アジア市場で圧倒的な強み。世界の“生活者の足”を目指し新興国ローカライズも徹底。
- 小型車、低価格車に集中。パワートレイン転換が遅いものの、過剰投資を避けて収益維持。
- 商品開発や生産のフレキシビリティ・コスト競争力が強み。
- スズキは「質素」「現場力」と「生活者目線」を最大の武器に、日本型自動車産業の良心として君臨しています。
まとめ:勝ち組は「多様化・現地化・技術投資」をバランスよく展開し、市場変化の兆候に先んじて手を打った。負け組は「軸のブレ」「商品・ブランド力の弱体化」「改革の遅れ」で、外部環境の揺らぎに対応できなかったことが差を生んだと言えます。

■ 日本の各メーカーについて。EVの波に乗れなかった時点でオワコンなの?
「エンジンを作る技術より、EVカーを作れる技術が求められる時代になったのに、いつまでもエンジンにこだわりすぎた。だから日本の自動車メーカーは終わっている、オワコンだ」という意見や見方があります。これは的外れ?的を得ている?この見方には「一部は的を得ているが、全部が的外れとも言い切れない」という評価が妥当です。
ー 的を得ている部分
- 日本メーカーはEVの本格的シフトが欧中・米メーカーより遅れたのは事実です。ハイブリッド技術への依存が長く続き、エンジン技術にこだわってきた背景から“EV化の助走”が遅かった傾向があります。
- 2025年現在、EVの国内新車販売シェアは依然2~3%程度と低く、HV比率が圧倒的。EVで世界的存在感を示すことができていないのは、多くのデータや評論家も指摘しています。
- トヨタ、ホンダ、スズキ、マツダなど主要メーカーのEV投入は「世界先進勢に対して数年の遅れ」。日本自動車業界全体が試練期に入ったのも事実です。
ー 的外れな部分・補足
- 日本メーカーは完全に「オワコン」ではありません。HV(ハイブリッド)を軸に「燃費・信頼性・商品力」で世界上位シェアを維持しています。とくにトヨタはHV/PHV/EVの多軸展開戦略で世界トップ利益率を稼いでいます。
- 世界市場ではEVへの急激な移行が止まりつつあり、エンジン車・HVも一定期間は大きな市場が残る見通しも出ています。日本メーカーがエンジン技術を磨き続けたことが「競争力の源泉」となる場面もあり、“完全な時代遅れ”ではないという評価も多いです。
- 充電インフラ・電力供給・消費者ニーズなど、日本固有の事情もEV遅れの背景。メーカーだけの責任/失策とは言い切れない構造問題もあります。
まとめ:EVへの本格投資が遅かったことは「的を得ている」批判ですが、エンジン車・HVの技術力とブランド力はなお世界トップ級です。今後EV市場が本格成長したとき、技術投資の加速と多軸戦略が日本メーカー復活のカギになります。
■ 今後日本メーカーがEV競争で優位に立つ戦略は?
今後、日本メーカーがEV競争で優位に立つための戦略は「技術力・信頼性・価格競争力・充電インフラ・多様展開」の融合が鍵になります。
ー 日本メーカーが優位に立つための主な戦略
- 全固体電池など革新的バッテリー技術の量産・低コスト化
- 環境・環境・特にトヨタ・日産は2028年前後に全固体電池EVを実用化予定。これが普及すれば航続距離・低温耐性・安全性・価格面で革新的な優位性となる。
- マルチパワートレイン戦略(EV+HV+PHEV+FCV)
- 環境・地域・ニーズごとに柔軟対応。「HVの強み+EV普及ペースに応じた段階的投入」でリスク分散と最大市場獲得。
- ソフトウェア定義車(SDV)の本格展開
- SDV=クルマのスマホ化。「OTAアップデート」「サブスクリプション」「ユーザー体験とサービス付加価値」を強化し、中国勢・米勢に対抗する革新。
- EV主力市場への商品・価格展開戦略
- 高級EVだけでなく、スズキやトヨタが新興国やアジア向けの「低価格EV」「小型EV」を拡大。EV本体だけでなく、バッテリーリース・残価保証・サブスクモデルなど多様化。
- 充電インフラ・リサイクル・エネルギー連携
- 日本国内でも「商業施設との連携増設」「V2H活用」など、充電環境と電力活用のユーザー視点を徹底。
- EVバッテリーのライフサイクルマネジメント、リサイクル、セカンダリーユースも競争力の源泉。
- 官民連携と国際標準への戦略発信
- 日本独自の脱炭素・EV政策のルール化、持続可能性・安全性・サプライチェーン強靱化も積極展開。
まとめ:日本メーカーは「技術力と信頼性+多軸戦略と価格競争力+SDV(ソフトウェア)化+充電インフラ+バッテリー革新+リサイクル」に注力することで、EV市場の本格普及期に競争力を再構築できます。今後数年が世界市場で“日本EVの真価”を問われる正念場です。
■ 日本の各メーカーがエンジン技術を生かして生き残る道はある?
日本の自動車メーカーがエンジン技術(内燃機関技術)を生かして生き残る道は、世界規模でハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)、さらには電動化対応エンジンの領域では十分残っています。完全なEV一辺倒にならない現実が、メーカー各社の戦略として活かされています。
ー 日本メーカーが生き残る主な戦略・道
- HVやPHEVの専用エンジン技術展開
- 内燃機関+電動化技術の融合で、高効率・低排出・高信頼性のハイブリッド車を世界市場に供給。EV普及が遅い新興国や多雪・寒冷地で特に競争力が高い。
- 水素燃料、合成燃料、カーボンニュートラル燃料対応エンジン
- トヨタは水素エンジンやバイオ燃料等、カーボンニュートラル対応の新型内燃機関開発も進めています。
- 内燃機関の部品・制御技術の電動車への転用
- 既存のエンジン設計・生産技術を電動パワートレイン(エネルギー効率や振動制御、軽量化)分野へ応用し、次世代車でも国内部品産業が活躍可能。
- 新興国・特殊用途・モータースポーツでエンジン車の需要は存続
- 新規制の遅い地域(東南アジア・アフリカ・中南米)や、商用車・特殊用途・レース分野では内燃機関の進化余地が残っています。
- 補 足
- 日本メーカーは「EVシフトと内燃機関活用の両立=マルチパスウェイ戦略」を基本とし、技術資産の有効活用と競争力維持を狙っています。
- EV比率が欧米・中国ほど急進していない現状、日本のハイブリッド技術が「移行期の主役」として世界シェアを維持する可能性も十分あります。
まとめ:EV主流化が進む中でも、日本メーカーのエンジン技術とその応用先(HV、PHEV、水素など)は向こう10年以上一定の市場価値を持つ見通しです。完全撤退ではなく「技術融合・新興需要・多様適応」で生き残る道が残されています。
■ EVには電気が必要。日本の電力需要・供給は?
日本では、現時点でEVの電力需要急増による深刻な電力不足には直面していませんが、「全乗用車EV化」やEV急速普及時には発電能力・充電インフラ拡充が必要だと政府・業界ともに警鐘を鳴らしています
ー 現状と発電供給力
- 2025年度のピーク時予備率は最低限必要な3%を全エリアでクリアしており、直近の電力需給は安定しています。
- 日本の電源構成は「火力(約7割=LNG・石炭・石油)」「再生可能エネルギー(22.9%)」「原子力(約8.5%)」が主力。今後は再エネ比率を36~38%(2030年)、2040年には4~5割程度まで高める目標です。
ー EV普及による課題
- 乗用車全て(約6,200万台)がEV化した場合、現状の年間総発電量の約1割増(ピーク時は10~15%増)となり、「原発10基、火力20基分の発電所が追加必要」という推計も出ています。
- 特に「充電タイミング(夏の昼間などピーク時)」が重なると、一時的に電力需給ひっ迫・電力不足リスクが高まります。
- 家庭・企業による充電分散やV2H(EVを蓄電池利用)など需給調整技術の活用が不可欠です。
ー インフラ課題
- 地方や郊外は充電インフラ不足、老朽化設備の更新・分布の均等化も課題です。
- 政府は2030年までに充電インフラ30万口整備を目標に掲げ、補助金や各種政策を強化中。
まとめ:現状の日本は「当面は安定供給可能」ですが、EV急普及や全車EV化時には「追加発電所の新設・再エネ導入加速・充電インフラ整備・需給分散制御」が不可欠となります。政府・業界は“将来の不足リスク”を見据えて対策強化中です。
