「金の卵」という言葉を、もう一度思い出してみませんか。
かつて日本が高度経済成長を迎えていたころ、中学校や高校を卒業したばかりの若者たちは「金の卵」と呼ばれていました。
地方から集団就職の列車に乗り、見知らぬ街へと向かう。その小さな背中には、「未来を切り拓く希望」が詰まっていた。そんな時代が、確かにありました。

■ 昔の“金の卵”と、いまの若者はちがうのか
一見、まったく違うように思えます。あの頃(※)はモノづくりの時代、今は情報と変化の時代。
けれど――根っこの部分は、変わっていません。いまも「若くて、まっすぐで、可能性に満ちた人」を求めている企業が、たくさんあるのです。
高卒採用の求人倍率は、実は大学卒よりも高い。それだけ、企業が“原石”を探しているということ。そして、多くの経営者が気づきはじめています。
「高卒の若者には、伸びる力がある」
「一から育てることで、会社の色に染まってくれる」
※かつての「金の卵」時代とは:1960年代、高度経済成長の波に乗り、日本中の企業がこぞって若い労働力を求めていました。地方の中学校・高校から集団就職列車が上京し、10代の若者たちは“金の卵”と呼ばれました。それは、「若くて素直で、伸びしろがある」存在を象徴する言葉でもありました。

現代はどうでしょうか? ― “人手不足”だけではない構造変化
少子化・採用競争・大卒志向の固定化。一見すると「金の卵の時代」とは異なるように見えますが、実は似た構図が戻ってきています。
企業が「若手を一から育てたい」と考え、高卒採用に再び注目しているのです。
・大卒求人倍率:1.71倍(2024年卒)
・高卒求人倍率:2.64倍(同年卒)
つまり、高卒のほうが“売り手市場”。まさに原石ですね。
■ 令和の“金の卵”は、デジタルを使いこなす世代
いまの10代は、生まれたときからスマホやネットが身近にある世代。デジタルツールを自然に使いこなし、情報感度も高い、いわゆるSNSやAIを使いこなすデジタルネイティブ。
そんな若者たちは、「学ぶスピード」や「順応力」において非常に優れています。決して“即戦力”ではなくとも、“成長力”は大きいのです。
しかも、地元で働きたいという志向が強く、一度根を下ろせば、長く会社を支えてくれる可能性があります。企業にとっては、「未来の主力を自社流に育てられる」大きなチャンスというわけです。
■ 大切なのは、「育てる覚悟」と「見せる工夫」
高卒採用で成功している会社に共通しているのは、「高校との信頼関係づくり」と「教育前提の設計」です。
それは求人票を出すだけでは伝わらないポイントです。先生と話す。見学に来てもらう。現場で空気を感じてもらう。そうした丁寧な一連の関係づくりが、何よりの採用力になります。
そして、もうひとつ。
高校生や保護者、先生に“伝わる言葉とデザイン”を整えること。
「うちは人を大切にしている」という想いが、きちんと形になっているか。そこが問われる時代です。
■ 「金の卵」という言葉の本質は、“信じて育てる”ということ
“金の卵”とは、単に若い労働力を指す言葉ではありません。「信じて、育てる」文化の象徴です。
短期的な利益よりも、人を育てる長期的な投資。それができる会社こそ、次の時代を生き抜く企業です。
若者を信じ、未来を託す経営こそ、いま最も価値ある“投資”なのかもしれません。

昔、“金の卵”たちは日本の成長を支えました。これからは、あなたの会社が“次の金の卵”を育てる番です。
押さえておきたい4つのポイント
- 「人材を探している」状況から、「人材が企業を選ぶ」状況に近づいています。企業は “選ばれる側”にもなり得る という認識を持つべきです。
- 求人数が増え、初任給が上がっているということは “高卒採用=安く済ませる”モデルが通用しなくなりつつある というサインです。
- 特に工業系・製造系・地方の中小企業にとっては、高卒採用が狙い目ですが、その分「他社との差別化」「育て方の仕組み」「ブランディング」が求められています。
- 求人倍率が4倍を超えているというデータから言えば、 「採る側の戦略」を立てておかないと、優秀な若手を他社に取られてしまう可能性が高いということです。
裏付けデータ
厚生労働省のデータで、令和6年度(卒業予定:令和7年3月)の高校・中学校新卒者について、「求人倍率」が3.70倍と、前年同期比で上昇しています。
- 求人数:約46.5万人(前年同期比+4.8%)
- 求職者数:約12.6万人(ほぼ横ばい)
→ 単純に言えば「求職者1人に対して約3.7社分の求人がある」状況です。
さらに、令和7年3月卒業予定(「25卒/26卒」の表現も出ています)について、求人倍率が4.10倍という数値が報じられています。
- 記事では「高卒求人倍率は4.1倍と“超売り手市場”」という見出しも。
- また、企業アンケートでは「26卒においても求人募集を増やす予定の企業が36.2%」というデータもあります。
高卒初任給の上昇も顕著です。例えば、2026年3月卒業向け(26卒)求人の初任給平均額が20万1,611円 と、前年比 105%増というデータも出ています。
→ 単純に「求め手が増えている」だけでなく、「条件も改善してきている」という傾向があります。
製造・工業高校の専門領域では、求人倍率が20倍超という報告も。例えば、工業高校卒の求人倍率が 20.6倍という記事もあります。
