「大口が1社あると安心」…そう感じるのは自然です。管理はラク、売上も見栄えがいい。
でも経営の強さは、売上の大きさではなく“止まりにくさ”で決まります。一本足打法は、止まった瞬間に即ダメージ。複数顧客は、ダメージが分散されます。
「太い1本の大口顧客」と「細い複数の顧客」、どちらが本当に会社を守ってくれるのか。今回は、営業現場でよくある年商3億円クラスの例を使って、顧客集中リスクをざっくり計算してみます。

目 次
設定:年商3億円、パターンAとB
あるBtoB企業(例えば機械・部品)が、年間売上3億円だとします。
- パターンA:大口1社に売上の50%(1.5億円)依存、その他10社で残り1.5億円
- パターンB:中口15社でほぼ均等に分散(1社あたり約2,000万円)
ここから、「1社が発注を止めたらどうなるか」を計算してみます。
計算1:1社が飛んだときの売上インパクト
■ パターンA:大口1社が止まった場合
- 大口1社の売上:1.5億円(全体の50%)
- この顧客が発注ゼロになると、売上は「3億円 → 1.5億円」に半減。
- 利益率10%のビジネスなら、
- もともとの営業利益:3,000万円
- 売上半減後の営業利益:1,500万円(固定費をすぐには削れない前提で、実際はもっと悪化しがち)
→ たった1社の判断で、「黒字ギリギリ → 一気に赤字スレスレ」になるイメージです。
■ パターンB:15社のうち1社が止まった場合
- 1社あたり売上:約2,000万円(3億円 ÷ 15社)
- 1社が発注ゼロでも、「3億円 → 2.8億円」の減少にとどまります。
- 利益率10%なら、
- もともとの営業利益:3,000万円
- 減少後の営業利益:2,800万円 × 10% = 2,800万円
→ 痛いけれど、経営が一気に傾くレベルではなく、「営業で取り返そう」と言える範囲に収まります。
計算2:「集中度20%ルール」で必要な顧客数を逆算する

顧客集中リスクの指標としてよく使われるのが、「最大顧客が全体売上の何%か」という数値です。
SaaSやBtoBビジネス向けのベンチマークでは、成長段階を過ぎた企業は「1社あたり10〜20%以下」を目標とすることが多いと言われています。
では、年商3億円で「最大顧客20%まで」とすると、最大顧客の売上はいくらまで許されるでしょうか?
- 全体売上:3億円
- 最大顧客の上限:3億円 × 20% = 6,000万円
つまり、「どんなに大事なお客さんでも、6,000万円を超えたらアラート」と考えるわけです。このとき、必要な顧客数の目安は次のように逆算できます。
- ざっくり1社あたり3,000〜5,000万円クラスの顧客を、少なくとも7〜10社は持ちたい
この「最大顧客を20%以内に抑える」という考え方が、一本足打法から抜け出すためのシンプルな目安になります。
計算3:銀行・評価への影響をざっくりイメージする

金融機関や投資家は、「売上の何%を上位何社が占めているか」を必ず見ています。
例として、同じ年商3億円でも:
- 会社X:上位1社で50%、上位3社で80%
- 会社Y:上位1社で15%、上位5社で45%
この2社が同じ利益水準でも、銀行から見ればY社の方が「売上の安定性が高い」と判断され、
- 与信枠
- 金利
- 新規融資時の姿勢
などで差がつきやすいと言われています。
つまり、顧客分散は「売上の話」だけでなく、「資金調達力」にも効いてくる数字というわけです。
まとめ:現場で使える“ざっくりチェック式”
最後に、現場で自社をチェックするための3つの問いを。
- 「最大顧客の売上比率は何%か?」(目安は20%以下)
- 「その1社がゼロになったら、売上はいくら減るか?利益はどれだけ吹き飛ぶか?」
- 「3年後に“最大顧客比率を○%まで下げる”と決めたとき、あと何社・いくらの顧客が必要か?」
これを数字にしてみるだけでも、「太い1本を太くする営業」と「細い柱を増やす営業」のバランスが見えてきます。
だからこそ、数字を使って自社の立ち位置を定点観測しながら、「どこまで太くしてよいか」「いつ細い柱を増やすか」を意図的に選ぶことが経営の腕の見せ所になると思います。
