ナフサ問題を、お米が解決する?

先日、テレビ番組「グッド!いちおし」を観ていると、「ナフサ供給不安を救う? 石油依存減らす主役は『コメ』」というテーマでした。 ナフサの供給不安が高まる中で、今期待されているのがなんと「コメ」!石油依存から脱却する、知られざるコメパワーに迫ります。というものでした。非常に興味深い内容でした。

MRD通信

以前にも取り上げていますが、改めてもう一度。

ナフサとは、石油からつくられる基礎原料のひとつです。これを分解すると、エチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが生まれ、そこからプラスチック、合成繊維、ゴム、インク、包装材、日用品など、実にさまざまな製品につながっていきます。

つまりナフサは、普段私たちが意識していないだけで、生活と産業のかなり奥深いところを支えている原料です。

だからこそ、ナフサの供給に不安が出ると、単に「石油化学業界の問題」では済みません。食品包装、物流資材、印刷物、成形品、日用品、医療用品など、かなり広い範囲に影響が及ぶ可能性があります。

番組で紹介されていたのは、お米を原料にしたバイオマスプラスチックです。代表的なものに「ライスレジン」があります。これは、非食用のお米を使った国産バイオマスプラスチックで、従来の石油由来プラスチックの使用量を減らす素材として注目されています。

ここで大事なのは、食卓に並ぶお米を奪う話ではない、という点です。使われるのは、食用に回りにくいお米、規格外米、破砕米、古米などです。つまり、「食べるためのお米」ではなく、「余っている・使い道が限られているお米」に新しい出口をつくる発想です。

これはなかなか面白い話です。これまでなら「処分する」「安く売る」「使い道に困る」とされていたものが、技術と用途設計によって、産業資材に変わるわけですから。

なお、お米由来のプラスチックが、すぐにナフサを全面的に置き換えるわけではありません。世の中のプラスチック量は膨大ですし、強度、耐熱性、価格、量産性、加工適性、用途ごとの規格など、クリアすべき条件はいくつもあります。

ですから、「これでナフサ問題は全部解決だ」と見るのは早計です。しかし、「ナフサだけに依存しない選択肢が増える」と考えると、これはかなり大きいです。

企業経営において怖いのは、原料が高くなることだけではありません。もっと怖いのは、「手に入らない」「納期が読めない」「価格転嫁が追いつかない」という状態です。その意味で、バイオマス素材や国産原料の活用は、環境対応であると同時に、調達リスクへの備えでもあります。

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日本人にとって、お米は主食です。だから「お米=食べるもの」というイメージが相当強い。

しかし、今回の話を聞いていると、お米はもはや食料であると同時に、素材でもあるのだと感じます。

食べる。
加工する。
発酵させる。
粉にする。
燃料にする。
樹脂にする。
インクにする。

こう考えると、お米の可能性はかなり広いのですね。そして、これは農業にとっても非常に大きな意味をもちます。

食用米だけで勝負するのではなく、非食用米や資源米としての出口が広がれば、休耕田や耕作放棄地の活用、地域農業の維持にもつながる可能性があります。三井物産系の紹介記事でも、非食用米を原材料にしたライスレジンが、石油由来プラスチックの使用量削減だけでなく、農業活性化の一助になる可能性が語られています。

この話は、大企業や素材メーカーだけの話ではありません。中小企業にとっても、かなり大きなヒントがあります。

たとえば、包装資材。
たとえば、ノベルティ。
たとえば、会社案内や販促品。
たとえば、店舗で使う袋や容器。
たとえば、展示会で配るクリアファイルやサンプル袋。

こうしたものを、少しずつ環境配慮型の素材に変えていくことは、企業姿勢を伝える手段になります。

もちろん、単に「SDGsっぽいから使いましょう」では弱いです。それでは表面的です。大切なのは自社の事業や地域性、顧客へのメッセージと結びつけることです。

「石油由来素材を少しでも減らす」
「国産資源を活用する」
「廃棄されるものに新しい価値を与える」
「地域や農業とのつながりを考える」

こうした文脈があると、素材選びそのものが、会社のメッセージになります。

今回の「ナフサ問題をお米が解決する?」という話で、いちばん面白いのは、素材そのものよりも発想の転換です。

石油が足りない。では、別の石油を探す。これが従来の考え方です。

しかし今回は、まったく違う場所から答えが出てきました。それが「コメ」です。

一見、関係なさそうなものが、技術によってつながる。余っていたもの、困っていたもの、価値が低く見られていたものが、別の産業の課題解決に使われる。ここに、これからのビジネスのヒントがあります。

「うちには関係ない」と思っているものの中に、実は新しい価値が眠っているかもしれない。「これはこういうものだ」と決めつけているものが、別の場所ではまったく違う意味を持つかもしれない。

ナフサ問題をお米がすべて解決するわけではありません。しかし、お米がナフサ問題を考える入口になる。そして、石油依存、資源循環、農業、地域、商品開発をつなぐきっかけになる。

そう考えると、これは単なる珍しい技術紹介ではありません。「今あるものの見方を変えれば、次のビジネスの種が見えてくる」という話なのだと思います。

お米は、侮れませんね。
食べてよし。
支えてよし。
そしてこれからは、素材としてもよし。

日本のコメパワーは、まだまだ奥が深そうです。