目 次
- 総務は“コストセンター“なんかじゃない
- 1. 攻めの総務は、まず「採用」でお金を生む
- 2. 攻めの総務は「営業支援」でお金を生む
- 3. 攻めの総務は「情報発信・ブランド」でお金を生む
- 4. 守りの総務 → 攻めの総務で、年間いくら生み出せるのか?
- 5. 自社用にアレンジするための「ひな形」
- 6. 「総務は経費」から「総務は仕組みづくりのプロ」へ
- まとめ
- ★新しい総務の立ち位置とは?⇒バックオフィスは昔の考え
- ⇒「裏方」から「ビジネスのハブ」へ
- ⇒評価軸が「コスト削減」から「売上・採用への貢献」に
- ⇒やる仕事の“質”が変わる
- ⇒総務の位置づけが「現場の後ろ」から「経営のすぐそば」に
- ⇒「バックオフィス」という言葉自体が、だんだん合わなくなる
- 結論:総務を「裏方」と呼ぶかどうかは、社長次第
総務は“コストセンター“なんかじゃない
「総務って、どうしても“コストセンター”に見られがちで…」。このような話をこれまで何度聞いたことでしょう。
契約管理、備品手配、勤怠、福利厚生…。ありとあらゆる裏方仕事。バックオフィス業務。どれも会社にとって不可欠ですが、「売上に直結する仕事か?」と聞かれると首をかしげたくなる社長や営業職の方々は少なくないのでは。
でも発想を少し変えるだけで、総務は “お金を使う部署” から “お金を生み出す部署” に変わります。
今回は「守りの総務」が「攻めの総務」になったら、年間いくらぐらいの利益を生み出せるのか? を、できるだけ具体的な数字で“見える化”してみます。

1. 攻めの総務は、まず「採用」でお金を生む
◆前提:総務が“採用の司令塔”になる
経営者や現場任せだった中途採用を、総務が主導して、こんなことをやるイメージです。
- 自社採用サイトや採用ページの整備(取材・原稿や写真の準備を仕切る)
- 求人媒体の選定・原稿作成
- 社員インタビュー・求人用コンテンツの企画
- 面接スケジュール調整、候補者フォロー
…など、「採れる仕組み」を総務が作る。
では、営業1名を採用できたときの“お金”を計算してみます。
◆ケース①:営業職1名を総務主導で採用した場合
- 1件あたりの粗利:30万円
- その営業が軌道に乗ったあとの平均:月2件受注
- ただし入社1年目なので、最初の半年は半分の生産性(新人期間)
① 新人期間(半年)の粗利
- 月1件 × 粗利30万円 × 6か月
= 180万円
② 後半半年(フル稼働)の粗利
- 月2件 × 粗利30万円 × 6か月
= 360万円
③ 1年目の合計粗利
- 180万円 + 360万円
= 540万円
ここから、採用にかかったコストを引きます。
- 採用広告・イベントなどの費用:仮に 50万円
営業1名の採用で生まれた“1年目の純増利益”
= 540万円 − 50万円
= 490万円
総務が“攻めの総務”として動き、毎年こういう営業を2名採れるモードを作れたとしましょう。
490万円 × 2名 = 980万円/年
採用支援だけでも、年間約1,000万円近い粗利を生み出している計算になります。
2. 攻めの総務は「営業支援」でお金を生む
つぎに、総務が営業支援として
- 顧客向けセミナー・勉強会の企画・運営
- 展示会・イベント出展の段取り
- 事例集・提案書のテンプレ整備
などを担うケースです。
◆ケース②:総務が主導する顧客向け勉強会
条 件
- 勉強会1回あたりの参加者:50名
- 商談につながる割合:40% → 20件の商談
- 商談から受注になる割合:20% → 4件成約
- 1件あたりの粗利:40万円
1回の勉強会が生む粗利
- 4件 × 40万円 = 160万円
これを総務が企画し、年4回 回せる仕組みを持てたとすると…
160万円 × 4回 = 640万円/年
この640万円は、「イベントを構想して、準備して、段取りして、フォローまで回した総務の仕事」が生み出した利益と考えることができます。
◆ケース③:総務が事務仕事を引き取り、営業の“売る時間”を増やす
「それは節約じゃないの?」と思われるかもしれませんが、ここでは“浮いた時間を営業活動に回す”前提で、売上に換算します。
条 件
- 総務が営業1人あたり、月10時間分の事務仕事を肩代わり
- 営業は5名
→ 営業全体で、50時間/月 の時間が生まれる
このうち半分を、新規・深耕営業に回せたとすると
- 営業活動に回る時間:25時間/月
- 1回の訪問・商談を2時間とすると
25時間 ÷ 2時間 = 12回の追加訪問/月 - 追加訪問からの成約率:20%
- 1件あたりの粗利:20万円
月あたりの追加受注
- 12件 × 20% = 2件/月
月あたりの追加粗利
- 2件 × 20万円 = 40万円/月
年間の追加粗利
40万円 × 12か月 = 480万円/年
「総務が事務を引き取る=時間の節約」ではなく、“売上につながる時間”に変換できれば、年間480万円クラスの利益になるわけです。
3. 攻めの総務は「情報発信・ブランド」でお金を生む
最後に、総務が中心になって
- 事例インタビューの段取り
- コーポレートサイト・採用サイトの更新
- SNS・ニュース配信
- 社内イベント・地域活動の発信
などを行い、Web経由の問い合わせを増やすケースを見てみます。
◆ケース④:Web問い合わせの増加
条 件
- Webからの問い合わせが 月3件 → 月8件 に増えた(+5件/月)
- Web経由の受注率:20%
- 1件あたりの粗利:30万円
増えた受注
- 追加問い合わせ5件 × 受注率20% = 1件/月
月あたりの追加粗利
- 1件 × 30万円 = 30万円/月
年間の追加粗利
30万円 × 12か月 = 360万円/年
この「問い合わせ増加」の背景に、
- 総務が社員に声をかけて事例取材をし
- 写真撮影や原稿作成を段取りし
- 制作会社や社内担当と連携して更新を続けた
というストーリーがあるなら、この360万円も“攻めの総務”が生み出した利益として扱えます。
4. 守りの総務 → 攻めの総務で、年間いくら生み出せるのか?
ここまでの4ケースをまとめてみます。
- 【採用】営業2名を総務主導で採用
→ 約 980万円/年 - 【営業支援】顧客勉強会を年4回開催
→ 約 640万円/年 - 【時間創出】事務肩代わりで営業の訪問を増やす
→ 約 480万円/年 - 【情報発信】Webからの問い合わせを増やす
→ 約 360万円/年
◆合計すると…
980万 + 640万 + 480万 + 360万
= 2,460万円/年
ざっくりですが、このモデルケースでは「守りの総務」から「攻めの総務」に変わることで、年間2,000万〜2,500万円クラスの粗利を生み出せる、という計算になります。
もちろん、業種・粗利率・社員数によって数字は変わります。しかし、ポイントは数字そのものよりも
「総務を“経費”で見るか、“投資&収益源”として見るか」
という視点です。
5. 自社用にアレンジするための「ひな形」

記事を読んでくださっている経営者の方/総務部の方は、ぜひ自社の数字に置き換えて、ざっくりでいいので計算してみてください。
◆自社版・攻めの総務シミュレーション
- 採用で生まれる粗利
- 1人あたり年間粗利 × 採用人数 − 採用コスト
- 営業支援イベントで生まれる粗利
- (参加者数 × 商談化率 × 成約率 × 1件あたり粗利)× 年間開催回数
- 営業時間の創出で生まれる粗利
- (増えた訪問件数 × 成約率 × 1件あたり粗利)× 12か月
- Web・SNS発信で生まれる粗利
- 追加問い合わせ件数 × 受注率 × 1件あたり粗利 × 12か月
これを全部足したものが、「攻めの総務」が年間で生み出しうる利益です。
6. 「総務は経費」から「総務は仕組みづくりのプロ」へ
攻めの総務がやっていることを、別の言葉で言うと
- 採用の仕組みづくり
- 営業を後押しする仕組みづくり
- 情報発信の仕組みづくり
です。これらはすべて、「社長一人では手が回らないけれど、本当はやりたいこと」でもあります。総務がそこを引き受け、社内を巻き込み、外部パートナーとも連携していくことで、
- 売上が安定して伸びる
- 採用がラクになる
- 会社のブランドがじわじわ効いてくる
といった“じわじわ効く成果”が積み上がっていきます。
まとめ
まとめます。
- 守りの総務のままだと、「経費削減」でしか評価されない
- 攻めの総務に変わると、年間2,000万円超クラスの利益を生むポテンシャルがある
- ポイントは、「総務をコストセンターではなく、仕組みで売上を生む部門として設計し直すこと」
もし社内に「真面目で気が利く総務さん」がいるなら、その人はきっと “攻めの総務”の原石 です。
あとは経営者が、「総務にどんな“攻めの役割”を託すのか?」を決めてあげるだけで、動き出すかもしれません。

総務部が「経費節減」に走った結果、稼ぎ頭である営業部との間に軋轢を産む結果に…というお話も非常によく耳にします。規律やルールはもちろん重要ですが、締め付けるだけのルール改定では営業部が動きににくくなり…。明確な線引きと同様、“余白(遊び)”はとても重要です。自動車のハンドルのように。
★新しい総務の立ち位置とは?⇒バックオフィスは昔の考え
「総務=バックオフィス」という捉え方そのものが、だんだん 古い言葉 になってきています。
⇒「裏方」から「ビジネスのハブ」へ
これまで総務と言えば、
- 契約管理
- 備品発注
- 社内ルールづくり
- 社内イベントの段取り
といった、社内を滞りなく回すための裏方が中心でした。
攻めの総務・戦略総務になると、ここに
- 採用プロジェクトの司令塔
- 営業支援(セミナー、事例取材、提案資料の整備)
- Web・SNS発信用の“社内編集部”
- 地域連携・パートナーシップの窓口
が加わります。つまり、
「社内のことを何でも知っている部門」から「社内外をつなげて、ビジネスを前に進めるハブ」
に立ち位置が変わる、というイメージです。
⇒評価軸が「コスト削減」から「売上・採用への貢献」に
いまのバックオフィス的な見られ方だと、総務はどうしても
- ミスがないか
- コストを下げられたか
- トラブルを防げたか
という 「減点方式」「節約基準」 で評価されがちです。
攻めの総務になると、ここに
- 総務主導の採用で何人採れたか
- 総務が準備したセミナー・勉強会からいくら受注が出たか
- 総務が動かしたWeb発信から問い合わせが何件増えたか
といった 「加点方式」「売上貢献」 の指標が乗ってきます。
バックオフィス=経費
攻めの総務=「投資対効果が測れる部門」
という見られ方に変わるので、予算のつき方や人の配り方も変わる はずです。
⇒やる仕事の“質”が変わる
バックオフィス的な総務
→ 「決まっていることを、正確に・抜け漏れなく回す仕事」が中心。
攻めの総務
→ そこに「まだ決まっていないことを形にする仕事」が乗ってきます。
たとえば…
- 「中途採用を増やしたい」と社長が言う
→ 募集要件の整理、採用ページの構成、社員インタビューの段取り、媒体選定、スケジュール設計まで総務が組み立てる - 「既存顧客向けの勉強会をやりたい」と営業が言う
→ タイトル・内容を一緒に考え、案内文をつくり、申込フォームや会場手配をまとめて総務が引き受ける
ここまでくると、総務の仕事は
- 事務処理
- 企画
- 編集(文章・写真・レイアウトの“まとめ役”)
- ファシリテーション(社内の人を巻き込む役)
の ミックス職種 のような存在になっていきます。
⇒総務の位置づけが「現場の後ろ」から「経営のすぐそば」に
バックオフィスとしての総務は、営業や現場部門の“後ろ側”にいるイメージでしたが、攻めの総務は、どちらかというと
- 社長のすぐ近く
- 経営会議に呼ばれるポジション
- 採用・広報・営業支援など横串テーマの責任者
として位置づけられやすくなります。理由は簡単で、
「採用」と「営業」と「情報発信」をまたいで見られるのが総務だけ
だからです。
部署をまたいで“全体最適”を見られるのは、もともと総務の得意分野。そこに「攻めの役割」が加わると、一気に経営寄りのポジションになる 可能性が高いです。
⇒「バックオフィス」という言葉自体が、だんだん合わなくなる
ここまでを踏まえると、攻めの総務・戦略総務は、もはやバックオフィスというよりも
- コーポレート・ハブ
- ビジネスインフラ部門
- 経営支援センター
といった呼び方のほうが、実態に近くなっていきます。実務としては
- 守り(法務・労務・規程・安全)
- 攻め(採用・営業支援・発信・連携)
の両輪ですが、経営者の頭の中では「攻めの顔」がどんどん前に出てくる、という感じです。
結論:総務を「裏方」と呼ぶかどうかは、社長次第
まとめますね。
- 総務を「バックオフィス」と呼ぶ会社
→ 総務は“減点評価の部署”として固定されがち - 総務を「攻めの総務」「戦略総務」と再定義する会社
→ 採用・営業支援・発信のハブとして、“収益貢献部門”へと変わっていく
最終的には、
「うちの総務には、どんな“攻めの役割”を任せるのか?」
を、経営側が言葉にしてあげられるかどうか。そこが分かれ目になりそうです。
